日本列島のほぼ中央に位置する愛知県。昭和52年から工業製品出荷額で日本一を誇り続ける「モノづくり王国」と呼ばれ、合成樹脂や自動車、工作機械など化学工業・重化学工業が盛んだ。また、名だたる武将の故郷でもあり、「天下布武」を目指した織田信長や、関白の地位まで上り詰めた豊臣秀吉、日本を統一した徳川家康の出身地としても知られる。
このように日本発展の原動力である愛知県であるが、現代社会における課題点も多数抱えている。名古屋駅前や豊田市駅前のように大規模な再開発が行われる都市がある一方で、空き家の増加や駅前の衰退に対策を打てていない地域も。高齢化や不登校生徒の増加なども問題視されており、地域課題の解決を図るため、県内の市町村では「スマートシティ ※1」の実現が重要視される。こうした背景などにより、愛知県ではWeb3.0技術が積極的に用いられているがその目的は自治体ごとに異なる。
たとえば、愛知の北西部に位置する岩倉市では、風景写真をNFTアートとして販売する取り組みを実施。愛知で1番面積の狭い市にとって、五条川や桜並木の風景がNFTアートになることで観光資源があらたな価値を持ち、地域創生や活性化の一助になることを目指し導入した。

▶自治体からふるさと納税業務を受託するMLJは、岩倉市の風景写真をNFTアートとして「OpenSea」にて販売。売上を同市に寄付することで地方創生を図る。記念切手に採用された写真「五条川の桜」に加え、MLJの契約フォトグラファー齋藤雄輝による撮影写真から5枚をセレクト。市としては観光資源のプロモーションや関係人口の増加も狙った。
導入している企業・団体→岩倉市、株式会社MLJ
他方で、愛知県西部の大府市では子育て世代を中心に社会増 ※2が続いたことで現在も人口増加傾向にあり、子育て支援の充実に加えて地域の歴史や特色を活かした取り組みに力を入れている。明治期に日本で初めてバイオリンの量産化に成功した鈴木バイオリン製造の創業者・鈴木政吉が思い描いた「バイオリンの里」の実現に向け、「バイオリンの里おおぶメタバース」を公開。大府市の歴史や文化をデジタル空間上で楽しむことができる。

▶大府市は「バイオリンの里おおぶ」の実現を目指し、戦前大府市にあったバイオリン工房などをメタバース上に再現。バイオリン関連資料などをデジタル化した「大府市歴史民俗資料館デジタルミュージアム」では、バイオリン制作の見学やコンサート観賞ができる。360°カメラにより館内を観賞できるコンテンツもあり、実際に訪れたような気分が味わえる。
導入している企業・団体→大府市
NHK大河ドラマ「どうする家康」の放送や、地元を拠点とするYouTuber「東海オンエア」などの人気によりすでに知名度のある岡崎市では、さらに多くの人に市の魅力を知ってもらうために現実世界に限らず仮想空間「岡崎メタバース」でイベントや市産品の販売促進などを実施。メタバース内でタスクをクリアするとリアルで特典がもらえる仕組みも構築した。

▶岡崎市はSTART LANDS Inc.と包括連携協定を締結し、関係人口の創出やふるさと納税まで幅広い事業の協業を進める。メタバース上に岡崎城や籠田公園、乙川河川敷など市の観光資源を再現した「岡崎メタバース」を建設。利用者に町を身近に感じてもらうことでメタバースeコマースによる市産品の販売促進や、バーチャル観光による観光誘客を目指す。
導入している企業・団体→岡崎市、START LANDS Inc.
さらに、岡崎市では老舗盆栽園「大樹園」が立ち上げた盆栽NFTマーケットプレイス「BON voyage」が話題に。気に入った盆栽をアートや資産として所有できるサービスで、プロの盆栽師に育成管理を任せつつ、所有権の2次流通も可能。「預け盆栽」文化とNFTアートを掛け合わせた注目のNFT活用法である。

▶岡崎市の老舗盆栽園・大樹園は、盆栽×NFT専門のマーケットプレイス「BON voyage」をローンチし、12鉢の盆栽オーナー権NFTの販売を開始。購入した盆栽を盆栽師が育成管理する「預け盆栽」という文化を体験できる。オーナーは盆栽園への訪問や展示会への出展が可能。盆栽文化に触れながら日本の銘木や盆栽業界を守ることにつながる取り組み。
導入している企業・団体→盆栽大樹園株式会社
身近なところにWeb3.0の技術が活用されている事例も。名古屋市の東別院で開催されたスタンプラリー「親子でハピキャンビンゴ」では、2次元コードを読み込むだけでスタンプラリーに参加でき、イベントの参加特典としてアルペンアウトドアーズで使えるクーポン券を配布。各エリアでNFTスタンプを受け取るとビンゴ台帳が埋まっていく仕組み。運営企業はデータを活用したより効果的なイベント企画ができる、参加者は手軽にイベントを楽しめるという運営側・参加側の双方にとってメリットのある活用方法だ。

▶名古屋市の東別院で開催された『サクラベツイン2025』にて、メ~テレは「親子でハピキャンビンゴ」を開催。ブロックチェーン技術搭載のサービス「みんなのあしあと」を活用することで、専用アプリがなくても手軽にビンゴスタンプラリーに参加できるように。参加特典として全国のアルペンアウトドアーズで使えるクーポンを配布し、実店舗への送客も促す。
導入している企業・団体→メ~テレ(名古屋テレビ放送)、株式会社電通、SUSHI TOP MARKETING株式会社
このように産業基盤や歴史文化など都市機能が共存する愛知では、地域課題の解決や伝統文化の継承などを目指してWeb3.0を活用した事例がたくさん見受けられた。Web3.0のサービスが一般化する未来もそう遠くはないかもしれない。
画像:Shutterstock、各社プレスリリース
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