JFIIPではRWAトークン化や決済など、実体経済に直結するWeb3.0プロダクトが集結した。規制準拠を前提としたデジタル金融の社会実装が進み、日本が次世代金融インフラを担う可能性が示された。
最優秀賞「Laplace」による不動産RWA×融資モデルをはじめ、マイナンバー連携ウォレットや電力トークン化など、金融・エネルギー・ID領域での実用的なユースケースが提示され、オンチェーン金融の広がりが明確になった。
登壇者は「国内だけをみない視点」や「強い動機」の重要性を強調している。規制対応を前提としつつ、国際競争を見据えたスピードと戦略が、日本がアジアの金融ハブとなるためのカギであると示された。

2月24日、東京・赤坂のJETRO本部にて「Japan Financial Infrastructure Innovation Program(日本金融インフライノベーションプログラム:以下、JFIIP)」に関するイベントが開催された。
JFIIPは、XRP Ledger(XRPL)を始めとする各種ブロックチェーン上において、エンタープライズグレードの規制準拠型デジタル金融ソリューションの開発支援を目的に立ち上げられたプログラムだ。
JFIIPには、JETRO、SMBC日興証券、トヨタ・ブロックチェーン・ラボ、Securitize Japan、HIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)などがパートナーとして参画した。
また、当日のプログラムはJFIIPにおいて最終選考まで残ったスタートアップによる「ファイナルピッチ」と、企業パートナーやa16z Crypto及びSBI Ripple Asiaからスピーカーが登壇したセッション「リーダーシップ・ダイアログ」の2部構成で行われた。
「ファイナルピッチ」を行うことが許されたスタートアップは全部で10社。多数の応募のなかから選ばれたプロダクトは「SuzuPay」「NexBridge」「Laplace」「TRUSTAUTHY」「Bankey」「KOTOTSUTE」「Seneca」「マイナウォレット」「Green PowerLedger」「Solobank」だ。
決済や不動産を始めとするRWA(現実世界資産)のトークン化など、まさに今後数年における重要テーマに関するプロダクトが集結した。そんなプロダクトのなかからグランプリに輝いたのは、ラグジュアリーRWA(現実資産)特化の分散型トークン化プラットフォーム「Laplace」だった。
同プロジェクトは、XRPLのネイティブなLending Protocol※機能を最大限に活用している点が大きな特徴だ。これにより、所有する不動産の価値を裏付けとした融資枠「HELOC(Home Equity Line of Credit:不動産担保融資枠)」をオンチェーン上で実現。伝統的な金融機関では数週間を要するプロセスを効率化し、流動性の低い実物資産に即時性のある資本効率をもたらす仕組みを構築した。このWeb3.0技術による既存金融課題の解決アプローチ及びプロダクトが持つ圧倒的な将来性と社会的意義が高く評価された格好だ。
「リーダーシップ・ダイアログ」でも、RWAを始めとする金融のオンチェーン化がテーマとなった。日本が制度整備の転換期を迎えているとし、特にスタートアップに対しては「国内だけをみない」ことやプロジェクトを推し進めるための「強い動機が重要」であることが語られた。その上で、「日本がアジアのハブになれるかどうかはスピードと視座次第」と強調された点は特に印象に残った。
JFIIPを通じて語られたのは、日本のWeb3.0とデジタル金融が抱える課題及び可能性だ。特にXRPLを軸に実体経済へ踏み込む具体的なユースケースや、規制を前提に世界を目指す姿勢が示され、日本が次の金融インフラを担う可能性も感じられた。課題を直視しつつも、確かな希望がみえたイベントだったといえる。
※Lending Protocol機能は、現時点ではDevNet(開発者用テストネットワーク)上でのみ利用可能な機能です。

◉アシフ・ヒンザ(Hinza Asif)
一般社団法人Asia Web3 Alliance Japan代表
本プログラムは、Asia Web3 AllianceJapanがベンチャースタジオ型の支援モデルを通じて、スタートアップをどのように支援するかを金融業界に広く示す取り組みです。今回、企業パートナーを結集し、スタートアップの成長とエコシステムの発展を促進することができ、非常に有意義なイベントとなりました。

◉廣田 裕介(Yusuke Hirota)
株式会社Neuron X Founder & CEO
発表プロダクト「Laplace」
グランプリ(最優秀賞)に輝いた「Laplace」は、海外高級不動産のRWA(Real World Asset)のトークン化を起点に、デジタル資産向けの担保融資という"オンチェーンファイナンスの空白"を埋めるスタートアップだ。伝統金融からデジタル金融への移行に欠かせないレイヤーを、日本から構築する。
──本プログラムへの参加を決めた理由を教えてください。
廣田裕介(以下、廣田):AIに続き、オンチェーン金融でも日本が世界に後れを取ることに危機感があります。必要なのは、規制に準拠したユースケースをいち早く社会実装することです。政府・金融機関が集うこの場で国内初のクロスボーダー不動産RWAを実証し、日本のデジタル金融インフラを前進させる一手にしたいと考え、参加を決めました。
──今後、このプロダクトで強化したいと考えているポイントを教えてください。
廣田:次の5年、トークナイゼーションは加速します。しかし現実資産には担保ローンという信用インフラがあるのに、RWAにはまだない。この空白こそが、私たちが解くべき問題です。
伝統金融からデジタル金融へ移行するために欠かせないこのレイヤーを、海外アセットのRWAマーケットプレイスと担保与信レイヤーの構築を通じて、クレジットインフラとして世界標準にしたいと考えています。
──各国でRWA領域の取り組みが加速していますが、競争優位性についてはどのようにお考えですか?
廣田:この領域は、法務・税務・規制対応・ブロックチェーン技術が国をまたいで複合する、いわば総合格闘技です。海外プレイヤーが日本の規制をクリアするのは難しく、国内プレイヤーが海外アセットを獲得するのも容易ではない。
私たちはすでに海外デベロッパーと数百億円規模のMOUを締結しており、このポジションをいち早く確立しにいきます。海外利回り6〜10%に加えキャピタルゲインも狙える市場に対し、日本だと4%前後にとどまる。この情報の非対称性を埋め、グローバルと日本をつなぐブリッジ役が私たちの強みです。
──最後に、ターゲットとするユーザー層について教えてください。
廣田:供給と需要、2つのユーザー層があります。供給サイドは、海外アセットを提供するデベロッパーと融資を出す金融機関。需要サイドは、海外アセットをポートフォリオに組み込みたい個人投資家と、ファイナンスが必要な投資家です。
日本の金融機関・販売パートナーとの協業を進めながらこの両サイドをつなぎ、国境もアセットクラスも超えたオンチェーン金融のインフラで、日本から世界の金融イノベーションをリードします。

◉橘 博之(Hiroyuki Tachibana)
マイナウォレット株式会社 代表取締役/CEO
発表プロダクト「マイナウォレット」
マイナンバーカードを活用し、簡単・安心・安全にWeb3.0へアクセスできるウォレット提供を行うマイナウォレット。JFIIPにはマルチチェーン対応の必要性などを感じたことから参加を決めた。
──本プログラムに参加した感想をお聞かせください。
橘博之(以下、橘):「マイナウォレット」はもともとEVMベースで開発を進めているのですが、今回のプログラムでリップルのテクニカルサポートを受け、XRPLとのインテグレーションが想像以上にスムーズにできたことは大きな収穫でした。
イーサリアムとリップルとの思想や設計の違いについてもエンジニアチームから丁寧に教えてもらい、自社ウォレットへの活用方法が明確になりました。
──今回参加するにあたり、事前にどのようなテーマを持っていましたか?
橘:私たちが作っているマイナウォレットは、ブロックチェーンを意識することなく、誰でもデジタル資産を扱えるようにすることを目指すプロダクトです。そのためにはEVMだけでなく、XRPLを始めとしたマルチチェーン対応が必要だと考え参加しました。
──今後の注力したいことを教えてください。
橘:マイナウォレットを通じて、マイナンバーカードを活用したKYC済みのブロックチェーンプラットフォームを構築していきたいです。ユーザー全員が本人確認済みで安心して取引できる環境を作り、そこにさまざまなサービスが連携する世界を目指していきたいと考えています。

◉鶴岡 聖(Akira Tsuruoka)
Digital Platformer株式会社 DID/VCグループ
発表プロダクト「Green Power Ledger」
これまでに北國銀行とともに預金型ステーブルコイン「トチカ」を提供するなど、Web3.0関連ソリューションを多数手がけてきたDigital Platformer。今回発表した「Green Power Ledger」では再生可能エネルギーのトレーサビリティ改善に焦点を当てた。
──本プログラムに参加した感想をお聞かせください。
鶴岡聖(以下、鶴岡):ほかの参加者のプロダクトがとてもすばらしいものでしたので、ピッチを行った方々のなかで半分くらいまでに差し込めれば上出来だろうと考えていたのですが、結果として3位に選出いただき驚いたと同時に、ありがたく感じました。
──今回発表したプロダクトでXRPLを活用する必然性についてはどのように考えていますか?
鶴岡:取引手数料が低く、取引のリアルタイム性の観点から、ファイナライズが早い点がXRPLの強みだと考えています。
電力取引はもともと大きな単位での取引が当たり前なのですが、今回発表した「Green Power Ledger」を導入することで1kwから取引が可能となります。ただ1kwで得られる利益が数円程度であることを踏まえると、手数料が安くなければ話になりません。そうした背景も踏まえ、XRPLは適した技術であるといえます。
──今後のビジョンを教えてください。
鶴岡:現状はPoCの段階なのですが、最終的には個人・法人に向けた電力のP2P取引を提供したいと考えています。
この取り組みではエネルギーロスが少ない設計構築が可能で、エコにもつながりますし、社会的意義もあると思います。今後5年、10年を見据えて、AIとの連携も当然視野に入れて取り組んでいきたいです。

◉桂 爽淳(Sojun Katsura)
The True Translate株式会社 取締役 中小企業診断士
発表プロダクト「KOTOTSUTE」
XRPLを基盤としたデジタル資産継承システムとしてThe True Translateが提供する「KOTOTSUTE」。デジタル化が進むにつれ直面するデジタル資産の相続問題という課題解決に向けたプロダクトとして評価された。
──本プログラムに参加した感想をお聞かせください。
桂爽淳(以下、桂):まず本プログラムはXで知り参加を決めました。参加企業数がわからないまま参加し、蓋を開けてみれば76社も参加していたというなかで、4位に選出いただいたことは大変ありがたいことだと感じています。
──今後、どのような点に注力していきたいと考えていますか?
桂:今回発表した相続分野の事業と日本は非常に相性がいいと考えています。
また、暗号資産の取り扱いに慣れている人でも資産が紛失してしまう、いわゆる“GOX(ゴックス)”が起きてしまう現状があるなか、不慣れな方ですと送金を完了することも難しいという課題があります。こうした状況を踏まえると、一定のカストディ機能は必要になってくると考えています。
そうしたなか、XRPLは特定の状況でトークンを回収できる「Clawback機能」を備えています。これは利用者と事業者の双方にとってメリットがあると考えていますので、引き続きXRPLを中心技術に据えてプロダクトを展開していきたいです。

◉藍 光祐(Kosuke Ai)
GustoDevelopment株式会社 代表取締役
発表プロダクト「SuzuPay」
GustoDevelopmentはAI、ブロックチェーンなどの先進技術を駆使し、「未来に向けたシステム開発・サービス提供」を掲げる。「SuzuPay」は小規模事業者向けの資金調達支援機能を備えている点と手数料が安価であることを強みとする。
──本プログラムに参加した感想をお聞かせください。
藍光祐(以下、藍):これまで日本語中心でのピッチが多かったなか、今回は完全に英語での発表だったので正直ハードルを感じていました。それでも、しっかり伝えられた手応えはありました。
今後も日本語と英語、ともに伝わりやすい内容でピッチができるように改めて準備をしっかりしたいと感じました。
──ペイメントサービスは現在とても話題になっているプロジェクト領域だと思いますが、他社と比べた時の強みを教えてください。
藍:小規模事業者向けの資金調達支援機能を備えている点や、手数料が低く、XRPLを活用することで決済スピードが非常に速いところは強みだと思います。
また、私たちのプロダクトではオフランプのサポートも整えており、プロックチェーンを知らない層でもより使いやすいような決済システムを構築しています。
──今後の展開を教えてください。
藍:小売事業者やEC、オンライン決済事業者に広げていきたいと考えています。
最終的には「ブロックチェーン」という言葉を意識しない世界を作りたいです。スマートフォンのように自然に使われるインフラにしていきたいですね。
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