10月10日、クリスティーズは「戦後・現代アートデーセール」で、ビットコインのオーディナルズプロトコルに刻まれたダイナミックなデジタルアート作品「Ascend」のオークションを開催する。
これは今回のセールで唯一のデジタルアート作品であり、クリスティーズのライブオークションに登場する初のビットコイン・オーディナルズとなる。伝統的なアートの世界とデジタルアートの世界の間の溝を埋めることになる。
美術商のジェームス・クリスティー氏が1766年に創業したクリスティーズは、世界で最も長い歴史を誇る美術品オークションハウスだ。
現在、ロンドン、ニューヨーク、香港を拠点に世界各地で年間約350回のオークションを開催しており、東京にもオフィスを構えており、美術品をはじめとして、宝石、時計、家具など80種類以上に及ぶ分野を取り扱っている。
そのほか、所蔵する市場価値に基づいて査定サービスも行っている。資産価値や売却にかかわる相談にも応じており、売却の際にはオークションを利用することも可能だ。
今回出品される「Ascend」は、アーティストのライアン・クープマンス(Ryan Koopmans)氏とアリス・ウェクセル(Alice Wexell)氏が制作した、「The Wild Within」というプロジェクトの一部。
このシリーズは、写真と高度な3D技術を組み合わせて、デジタル媒体を通じて建築廃墟を再生し、廃墟となった建築物にあらたな命を吹き込むことをコンセプトとしている。
この作品は、ソ連時代には有名な療養地だったジョージアのツカルトゥボにあるイベリア療養所の朽ちかけた美しさを表現している。
1952年から1962年にかけて建てられたこの建築物は、その後廃墟となり、クープマンス氏とウェクセル氏の芸術的探求に感動的な背景を提供したそうだ。
クープマンスはXに投稿した声明で、「私たちの唯一のダイナミックな碑文『Ascend』が、ロンドンのクリスティーズで開催される『戦後・現代アートデーセール』に出品されることをお知らせできてとてもうれしく思います」と述べた。
今では崩れ落ち、自然に飲み込まれてしまった療養所のロビーが、この作品の焦点となっている。過去と未来、自然と建築の幻想的な融合を表現している。
オーディナルズプロトコルを通じて、ビットコインブロックチェーンに刻まれたこの作品は、昼と夜のモードを切り替え、30分間ごとに変化し、ジョージアの実際の建築現場の実際の時間を反映するようになっている。
これはInscribing Atlantisのチームが開発した、革新的な再帰コーディングにより可能となり、デジタルアーティファクトをリアルタイムで変更できるようになった。このコーディングはビットコインクロックを参照し、アート作品が元の物理的な場所での時間の経過を反映できるようになっている。
2023年までイーサリアム(ETH)のみでNFTを手がけていたクープマンス氏は、ビットコインはデジタルアーティストにとってゲームチェンジャーとなるだろうと述べた。
過去には75億円で落札された作品も
2021年3月11日、デジタルアーティストのビープル(Beeple)氏の作品「Everydays-The First5000Days」がクリスティーズのオークションに出品され、約75億円で落札された。今回は初のオーディナルズの作品となり、こちらも数十億円規模の落札額が期待されている。
なお、近年の著名アーティストのデジタルアートの高額化を受け、投資プラットフォームの「アートセルス」はNFTを使って、アート作品を共同で所有するサービスを提供している。バンクシー氏や奈良美智氏などの人気作家の作品は高額になりすぎて個人所有が難しいが、NFTで所有権を分割することで約10万円くらいから作品を購入できるようにしている。
参考:Christie’s
画像:Christie’s
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