金融庁は8日、アンホステッド・ウォレット(自己管理型ウォレット)を活用したサービスが暗号資産(仮想通貨)交換業に該当しないとの判断をくだした。
これはJCBI(一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ)が経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて照会書を提出し、金融庁がそれに回答したことで明らかになった。
いわゆる自己管理型ウォレットの代表例としては、メタマスク(Metamask)やファントム(Phantom)などがあげられる。
しかし、中央管理者が介在しない自己管理ウォレットは、ユーザーが自分で資産管理を行うことができる一方で、秘密鍵を紛失した場合のリスクもユーザーが背負うことになる。
ブロックチェーンを活用したWeb3.0のマスアダプションのためには、NFTや暗号資産などの移転に利用する秘密鍵の管理という課題を解決することは必要不可欠なことだ。
しかし、秘密鍵は複雑かつ長い文字列であるため、一般ユーザーが自己管理するには負担がかかる。秘密鍵を紛失した場合はデジタル資産も永久に失ってしまうリスクがある。
ユーザーに代わって、ブロックチェーンサービスを提供する事業者がユーザーの秘密鍵を管理してユーザーの負担やリスクを軽減しようとすると、ウォレット機能を開発するためにかかるコストがかかり、資金決済に関する法律(資金決済法)上のカストディ規制対象となる可能性がある。
その対象となった場合には法遵守のための体制構築など相当なコストが発生する。
課題解決のためのサービスを提供開始
今回の金融庁の「自己管理型ウォレットは暗号資産交換業に該当しない」との回答を受け、JCBIは秘密鍵の管理に関して、ユーザー及び事業者の双方にとって、負担が小さくかつ、安全性の高いウォレット機能を開発するための支援サービスとして、「PassWallet(パスウォレット)」を開発し、9日から無償で提供を開始した。
JCBIは事業者へのパスウォレットの無償提供を通じて、ブロックチェーンサービス開発における4つの課題を解決できるとし、ブロックチェーンの社会実装を推進していく。
パスウォレットは、「UXを低下させる秘密鍵」機能を実装し、顔認証等のパスキー認証を取り入れた。そして「カストディ規制の該当性のリスク」を解決するために今回、金融庁からの回答を得て確認した形だ。「ウォレット機能の開発費用負担」の提供により、無償ASPサービスの利用によるコストの削減を行えるとしている。そして、パスウォレットを通じたサービス連携により、同サービスを利用した企業間での協業機会を創出できるとしている。
なかでも際立つのは、秘密鍵の代わりに顔認証システムを用いた点だ。秘密鍵を入力する手間をかけずに顔認証するだけでウォレットにアクセスできるのは、マスアダプション化につながる可能性を秘めている。
参考:金融庁、JCBI
画像:Shutterstock
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