日本で暗号資産(仮想通貨)ETFの発行承認を目指し、証券会社や運用会社、信託銀行、国内暗号資産取引所など13社と法律事務所や税理士法人らが業界横断で提言書をまとめた。25日、各社が「国内における暗号資産 ETF 等の組成等に向けた提言」として発表した。
提言では、「暗号資産現物ETFに優先的に組み込まれるべき銘柄」として、流通量が高く、知名度も高いビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)を明記した。国内暗号資産交換業者に預託されている両銘柄の保有比率が約90%と、大部分を占めることも記載されている。
暗号資産現物ETFは海外では知られた投資商品として定着しつつあるが、国内では企業や業界ごとに考え方が異なっており、統一的な見解はなかった。今回は各業界の暗号資産に精通する有志らが集まり、法制度整備などを求めた形となる。
背景には、ビットコイン等一部の暗号資産について、時価総額やパフォーマンス面で長期的な資産形成に資する資産として性質が示され、国内において暗号資産の現物保有も広がり、保有期間の長期化傾向が強まるなど、広く国民の投資対象と位置付ける動きが拡大していることがある。
また、米国では1月、ビットコイン現物ETFが承認され、大成功を収めるなど、暗号資産を投資対象資産として位置付ける動きが急速に広がっている。
一方で、国内においては、投資信託の投資対象資産である特定資産に暗号資産が含まれていないことにより、暗号資産を投資対象としたETFの組成はできない。
本提言は、国内における暗号資産現物ETFの組成の実現に向けた論点について整理するとともに、本勉強会の参加メンバーの総意として、組成等を可能とするために必要な諸制度の整備等について提言することを目的としている。
本提言はホワイトペーパーの内容を踏まえながら、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業、SBI証券、SBI VCトレード、片岡総合法律事務所、創・佐藤法律事務所、大和証券グループ、大和アセットマネジメント、野村アセットマネジメント、野村証券、ビットバンク、bitFlyer、三井住友信託銀行、みずほ信託銀行、三菱UFJ信託銀行などが参加している。
暗号資産を申告分離課税とすべき
本提言の内容としては「暗号資産ETF等の組成等を可能とする諸制度の整備を進めるべき」、「暗号資産ETF等および暗号資産の現物取引について申告分離課税とすべき」、「暗号資産ETF等の組成等に係る議論の対象として主要な暗号資産を優先すべき」の3点が主となっている。
暗号資産現物ETFの実現のためには、暗号資産の税制改正が欠かせない。現在、暗号資産による利益は雑所得に分類されており、最大で55%の課税義務が生じている。暗号資産業界では長年にわたって申告分離課税の対象とするよう税制改正が要望されている。暗号資産ETFの承認とあわせて、税制改正に向け業界横断の人力が必要となる。
参考:あずさ監査法人
画像:Shutterstock
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