三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など国内3メガバンクは、銀行間の国際決済インフラやブロックチェーン技術を使って瞬時に国際送金する仕組みをつくっていることが分かった。
2025年中の実用化を目指しているという。1ヵ月程度を要する場合もある着金までの時間はほぼゼロとなり、企業間の送金コストも大幅に下がる見通しだ。日本経済新聞が報じた。
三菱UFJFG、みずほFG、三井住友FGは、他の国内銀行や欧米の大手銀行など10以上の主要金融機関と今秋にも、実用化に向けた実証実験を始める。
貿易決済を中心とする企業間の国際送金の利用を想定している。将来的には、留学資金の送金など個人間のお金のやり取りでも利用できるようになる。
現行の国際的決済インフラである「国際銀行間通信協会(Swift=スイフト)」とブロックチェーン技術を組み合わせることがあらたなシステムの特徴だ。スイフトをなおざりにせず、協同することで新システムの早期導入を開始することが目的だ。
現在のスイフトを使った国際送金は「コルレス銀行」と呼ばれる複数の銀行を中継する。そのため円滑に送金できた場合でも数十分、マネーロンダリング(資金洗浄)対策に関連する情報の不備などがあると1ヵ月の時間がかかるのが現状だ。
今回はスイフトと協同、同協会の決済基盤を活用し、ブロックチェーン上に法定通貨の価値とペッグしたステーブルコインを乗せて銀行間で直接送金するため、着金までの時間は1秒以下という超高速決済を可能とした。
既存のインフラであるスイフトを活用することで、金融機関はあらたなシステムを構築する必要がなく、投資額も抑えられる。企業にとっても銀行に送金を以来するという従来通りの手続きで送金が可能となる。新たなシステムにおいては新たな手続きを踏む手間が不可欠なため、その課題が解決された。
企業や個人が支払うコストは為替手数料とブロックチェーン基盤の利用料のみ。日銀によると、従来のスイフトを活用した国際送金では銀行経由で200ドル(約28,600円)を海外に送金する場合、2013年~2019年の平均では送金額の17.5%という膨大な手数料がかかっていた。
手数料は10%以下に
特に手数料が高い新興国向けの場合には、送金コストは従来の10%以下になる。
3メガバンクは出資しているUFJ主導のブロックチェーンプラットフォームProgmat(プログマ)や、ブロックチェーン開発のデータチェーン、スイフトと協同で送金システムを構築した上で、銀行間で利用可能なステーブルコインを発行する。
スイフトは日本で電子決済に関する法整備が進んでいることを評価しており、日本の銀行と提携することを決定した。
米調査会社アライド・マーケット・リサーチによると、国際決済市場の規模は2022年時点で182兆ドル(約2京6,000兆円)である。20カ月・地域(G20)首脳会議は国際送金のコストや着金スピードを改善する必要性を指摘、世界的な課題となっていた。今回の実証実験が進めば世界初のブロックチェーンを利用した公的決済が可能となる。
参考:日本経済新聞
画像:Shutterstock
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