同日開催された記者会見で、代表の岡部典孝氏は「JPYCは日本の金融インフラを再定義するプロジェクトである」と強調した。ステーブルコイン市場は現在世界で約48〜49兆円規模に達し、そのうち99%が米ドル建てである。JPYCはこの偏重構造に挑む存在として、「円をデジタル経済圏の中核通貨に位置付ける」ことを目標に掲げる。
設計思想と事業構造
JPYCの最大の特徴は、ノンカストディ型であるという点だ。同社は顧客資産を預からず、発行されたJPYCはユーザー自身のウォレットに直接送付される。発行・償還・送金手数料は当面無料とし、裏付け資産の利息収入を主な運営原資とする。
裏付け資産は短期国債と預貯金の組み合わせで、将来的には国債8割・預金2割の構成を想定。金利が1%前後であれば3年後の目標とされる発行残高10兆円時に年間約1,000億円規模の収益が見込まれるとし、「手数料ゼロのデジタル円」を支える基盤となる見通しを示した。
一方、制度上は第二種資金移動業に位置付けられており、1回あたり100万円/1日までの発行・償還制限が存在する。
ただし、ウォレット間の送金・保有に制約はなく、100万円を超える高額送金も可能だ。今後は第一種登録による制限緩和も視野に入れているようだ。
国内外でのユースケース展開

JPYCはすでに複数の企業と連携を進めている。電算システムは全国65,000店超の決済ネットワークでのJPYC活用を検討し、アステリアは「ASTERIA Warp」への連携機能を開発中。HashPortは「HashPort Wallet」での対応を予定し、ナッジの「nudgeカード」ではクレジット代金をJPYCで支払う仕組みを導入する。
会見ではさらに、POS連携や開発者向けSDKの利用促進、会計・税務SaaSとの接続、決済代行(PSP)事業者による加盟店展開なども進行中であると明かされた。