リアルワールドアセット(RWA)トークン化市場が1.68兆円規模に拡大したと暗号資産(仮想通貨)取引所大手バイナンス(Binance)が最新の調査結果として発表した。
RWAとは、通貨、不動産、債券、商品などの有形及び無形の現実資産を指す。
オンチェーンのRWAトークンの合計は現在、1.68兆円規模にまで成長しており過去最高額を記録している。なお、この数値には24.5兆円規模にまで発展しているステーブルコイン市場はふくまれていない。
RWAトークンの主なカテゴリとして、米国債、民間信用、商品、株式、不動産、米国外債券。新興カテゴリとして、は空中権、炭素クレジット、美術品などが浮上してきている。
RWA分野における機関投資家や伝統的金融機関(TradFi)の参加が市場成長の原動力となっている。
▶︎オンチェーン上のRWAトークンの推移:レポートより引用
資産運用会社ブラックロック(BlackRock)の国債をトークン化した投資商品であるBUIDLは時価総額が5億ドル(約700億円)を誇り、業界一となっている。BUIDLはイーサリアム(ETH)上で発行されている。RWAである米国債をトークン化したファンドとして3月にローンチされたばかりだ。
BUIDLは総資産の100%を現金、米国債、現先契約に投資している。投資家はブロックチェーン上にトークンを保持しながら、利回りを得ることが可能となっている。
資産運用会社フランクリン・テンプルトンの米国債トークン化ファンド「フランクリン・オンチェーン米国政府マネー・ファンド(FBOXX)」は2番目に大きな国債商品であり、運用総額は4億ドル(約560億円)を超えた。ウィズダムツリーは株式商品をデジタルファンド化して市場を広げている。
RWAの基盤となるインフラストラクチャには、スマートコントラクト、オラクル、アイデンティティとコンプライアンス、保管ソリューションが存在する。
オラクルは、オンチェーン表現がオフチェーンの現実世界のデータを正確に反映するために非常に重要となる。
また、オフチェーンの法的合意にもとづいてオンチェーンアクションを開始することにも役立つ。RWA固有のオラクルの開発が今後注目されるところである。
バイナンスのブロジェクト分析では、Ondo(構造化金融)、Open Eden(トークン化された国債)、Centrifuge(トークン化、構造化、クレジット、集約)、Parcl(合成不動産)、Toucan(トークン化されたカーボンクレジット)、Jiritsu(ゼロ知識トークン化)が含まれている。
米利下げが影響する
現在のマクロ経済の観点からみると、米国では今後利下げが始まるとみられており、これは多くのRWAトークン、特に米国債をトークン化した投資商品に影響を及ぼすであろうと分析した。利下げが行われれば、利回りは期待できないためだ。
現在の米国債のトークン化商品は高い利回りが期待できるため人気商品となっていることが背景としてある。今後、日本の利上げが実施されたら世界で最も安全性が高いとされる日本国債のトークン化商品が出てくる可能性もある。
バイナンスはまた、RWAトークンの法的環境に関する懸念も残っていることも指摘した。しかしながら、多くのRWAトークンを担保とした資金調達を可能にするプラットフォーム「Centrifuge」は資産を保管するために特別目的会社(SPV)を利用している。債務不履行が起きた場合に、顧客資産を守るシステムをとっている。
今後、安全性がより確保されるにつれ、RWAトークン化市場はさらに拡大し続ける可能性がある。日本でも数年後には数兆円規模になるだろうと予測されており、世界全体では数十兆円規模にまで成長するものとみられている。
参考:バイナンスレポート
画像:Shutterstock
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