世界最大のステーブルコインUSDTを発行するテザー社は、数十億ドルの利益を投じる方法を探るなかで、商品取引業者(コモディティ取引会社)への融資を検討している。ブルームバーグが報じた。
テザーは、複数のコモディティ取引企業と米ドル建ての融資の可能性について話しあったという。その話しあいのなかでは、テザーがコモディティ取引に関与する可能性も探ったとされる。コモディティトレーダーは、石油やゴールドなどコモディティの国債輸送をファイナンスするため、信用供与に大きく依存している。
今回のテザーの動きは、通常は信用を伝統的な銀行に依存している業界を揺るがす可能性がある。テザーが信用を必要とする業界の複数の企業と米ドル融資の機会について話しあったと、匿名を条件とした事情に詳しい関係者がブルームバーグに明らかにした。
テザーとトレーダーとの会合で、ベネズエラやロシアなど米国の複数の制裁を受けている国々でトレーダーや生産者がドルを回避する手段としてすでに活用されているUSDTが、より主流の商品取引でどのように使用される可能性があるかについても話し合われた。
信用枠は、数百万ドル相当の石油、金属、飲料の貨物を世界中に輸送する商品取引会社にとって生命線だ。業界の大手は利用できる貸し手の広大なネットワークを持っている。一例として、大手トラフィグラ・グループは3月末時点で約150の機関と770億ドル(約1兆1,500億円)の信用枠を持つ。小規模な企業は、貨物を輸送し続けるために必要な資金を得ることに苦労しているのが現状だ。
テザーの提案では、「同社の資金調達が従来の貸し手と同じ厳格な規制条件にとらわれず、支払いや取引をスピードアップできる可能性があるため、特に魅力的なものである。民間信用は商品貿易金融に進出しつつあり、監査済みの財務諸表を提出していないテザーは、参加に必要な資本を有している」と関係者は述べた。
7月に発表された最新の財務諸表では、テザーは2024年上半期の利益が52億ドル(約約7,800億円)であると報告している。
テザーのCEOも商品業界参加を認める
テザーのCEO、パオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)氏はブルームバーグニュースとのインタビューで、同社が商品分野で機会を模索していることを認め、「それはまだ初期段階の検討だ」と述べている。
「商品取引にどれだけ投資するつもりなのかはおそらく公表しないだろう。まだ戦略を練っているところだ。我々はさまざまな商品取引の可能性を探ることに興味がある。この領域におけるチャンスは将来的に非常に大きいと信じている」と述べた。
ほとんどの商品貿易金融では、銀行は貨物の購入と出荷に対して業者に一定額の信用枠を与えている。商品に対する融資は、流動性の高い担保によって長い間、比較的に安全な投資でもあり、伝統的な銀行にとっては古くからある業務の1つだ。
テザーは貿易金融領域の研究開発のためのチームを雇用した。その幹部の一部は9月にジュネーブの商品金融業界のイベントとロンドンのLMEウィークという2つの業界会議に出席した。
参考:Bloomberg
画像:Shutterstock
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