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イーロン・マスクとXと仮想通貨 SNSと金融の融合がもたらす未来像

2025/03/25 10:11 (2025/03/25 10:19 更新)
Iolite 編集部
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イーロン・マスクとXと仮想通貨 SNSと金融の融合がもたらす未来像

はじめに

X image

かつてTwitterと呼ばれたSNSは、2023年にイーロン・マスク氏の手によって「X」へと生まれ変わった。この大胆なブランド変更の背後には、単なるSNSから「すべてを包含するアプリ(Everything App)」へと進化させるというマスク氏の野心的なビジョンがある。そのビジョンのなかで重要な役割をはたすとされているのが、暗号資産(仮想通貨)である。

ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、そしてドージコイン(DOGE)といった主要銘柄はもちろん、決済やマイクロチップレベルでの価値移転の手段として、暗号資産は「金融×テクノロジー」の最前線にある。イーロン・マスクという1人の人物が、それをSNSと融合させようとしている点に、多くの投資家やテクノロジー業界関係者は注目している。

本記事では、「Xの変貌と暗号資産の関係性」「DOGEに対するマスクの特異な愛着」「X Paymentsの戦略」「Web3.0時代のSNS像」などを詳しく掘り下げる。

イーロン・マスクの一言が仮想通貨市場を動かす

Tesla image

イーロン・マスク氏が暗号資産(仮想通貨)業界で注目を集めるようになったのは、2020年から2021年にかけての発言と行動による影響が大きい。特に有名なのは、2021年2月にTeslaが15億ドル相当のビットコイン(BTC)を購入し、一部製品の購入にビットコイン(BTC)決済を受け入れると発表したことだ。このニュースを受け、ビットコインの価格は急騰した。

その後、Teslaが環境負荷を理由にBTC決済を停止したことでも価格が急落するなど、マスク氏の発言は暗号資産市場のトレンドを大きく左右してきた。彼のXでの投稿やコメントは、単なるSNSの一言ではなく、マーケットを動かすトリガーとなっている。

マスク氏の“お気に入り”ともいえるドージコイン(DOGE)にも彼の一挙手一投足が影響を与える。

ジョークから誕生したミームコインであるドージコイン(DOGE)は、イーロン・マスク氏の投稿によってたびたび価格が急騰する現象を繰り返している。その背景には、マスク氏が「DOGEは庶民のための暗号資産(仮想通貨)である」と語るなど、同コインに対する理念的な共感を示している点があげられるだろう。彼の発言が市場に期待感を与え、価格変動の一因となっているのだ。実際、マスク氏が「D.O.G.E」と発言するだけで、ドージコインの価格が10%以上上昇することも珍しくない。

興味深いことに、この「D.O.G.E」という言葉は、米国政府の実在する組織とも関連している。トランプ政権発足後に、連邦政府の官僚主義を排除し、過剰な規制や無駄な支出の削減を目的として設立されたのが「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」であり、その頭文字を取れば「D.O.G.E」だ。

マスク氏は米政府の上級顧問を務めており、同省の特別職公務員として任用。D.O.G.Eはすでに連邦職員の大規模な削減に着手しており、特に教育省や米国国際開発庁(USAID)などの機関での改革を推進している。年間最大2兆ドルの無駄削減を目標に掲げ、すでに数十億ドル規模の削減を達成したと主張しているようだ。

省庁の名称にユーモアを残しつつ、抜本的な改革を迅速に推進する姿勢には、マスク氏のカリスマ的な経営者としての手腕が表れているといえる。

Xが目指す「Everything App」と暗号資産の接点

P2P image

Xは単なるリブランドではない。マスク氏の語る「Everything App」とは、メッセージ、通話、SNS、動画配信、決済、EC、求人など、あらゆるサービスを1つのアプリで完結させる構想だ。これは中国の「WeChat」がモデルとされており、日常生活に必要なあらゆる機能を提供する“スーパーアプリ”を目指している。

この中核を担うのが、2025年に本格的に始動するとみられる「X Money」という決済機能である。すでに米国の複数州で送金ライセンスを取得しており、フィアット(法定通貨)による送金・決済機能を搭載する予定とされている。

2025年1月28日に発表された情報によれば、XはVisaと提携し、デジタルウォレットおよびP2P(個人間)決済サービスを提供することが明らかになった。しかし、ここで注目すべきは、将来的に暗号資産(仮想通貨)との連携が視野に入っている点だ。

マスク氏自身がビットコインやDOGEへの理解と親和性を示してきたことを考えれば、Xが暗号資産(仮想通貨)ウォレット機能を内蔵し、暗号資産(仮想通貨)による投げ銭、コンテンツ課金、P2P送金、NFTの売買などを可能にする未来は十分に現実的である。

ドージコインとイーロン・マスク:偶然か戦略か

Dogecoin image

ドージコイン(DOGE)は2000年代初頭の「柴犬のミーム」から生まれたネタコインであり、当初は投機対象というよりもネットカルチャーの産物だった。しかし、イーロン・マスク氏の“推し”によって、その存在感は一変した。

2021年には、X(旧Twitter)で「ドージコインは未来の通貨だ」と投稿。さらにはTeslaのグッズをDOGEで購入できるようにするなど、実際のユースケースを導入した。このような「ジョークとリアルの間」を行き来する態度が、多くのファンを惹きつけている一方で、機関投資家からは「市場操作的」と批判されることも少なくない。

2023年には、Xのロゴが一時的に柴犬アイコンに変更され、DOGEの価格が再び急騰する出来事もあった。これもマスクの仕掛けの一環であり、XとDOGEのつながりを暗示するものとして投資家の注目を集めた。今後、「X Money」においてDOGEが正式採用されれば、「冗談のコイン」が現実世界で広く使われる決済手段へと昇華する可能性すらある。

SNSとWeb3.0の接点:分散型メディアとXの戦略

Web3.0 image

イーロン・マスク氏はWeb3.0という言葉を多用することは少ないが、そのビジョンには多くのWeb3.0的要素が含まれている。特に注目すべきは、プラットフォーム上のコンテンツ収益の分配構造と透明性の確保である。

たとえば、Xではクリエイターに対する収益還元機能が導入されており、広告収入の一部をユーザーに還元する仕組みが始まっている。これに暗号資産(仮想通貨)の即時送金やスマートコントラクトを掛け合わせることで、中央集権的プラットフォームとは異なる「ユーザー主体のエコシステム」が構築される可能性がある。

また、将来的にNFTやトークンによるアイデンティティの可視化、フォロワーとの取引、コンテンツの2次流通などが統合されれば、XはWeb2.0とWeb3.0の中間に位置する“ハイブリッド型SNS”としてユニークなポジションを築くことになるだろう。

まとめ イーロン・マスクの手にある「未来の金融プラットフォーム」

イーロン・マスクはTeslaやSpaceX、Neuralinkなど、複数の先端テクノロジー企業を率いてきた。Xにおける暗号資産(仮想通貨)活用の取り組みは、SNSと金融、そしてブロックチェーン技術を融合させる試みであり、既存のSNSの枠組みを超えた“あらたな社会インフラ”の構築ともいえる。

彼の発言1つで市場が動くという異常な影響力は、批判の的にもなるが、それだけ注目を集めている証拠でもある。Xが暗号資産(仮想通貨)を正式に導入し、決済や送金が当たり前になる世界が来れば、SNSは「情報を得る場所」から「経済活動の中心地」へと進化する。

暗号資産市場に投資する人も、テクノロジーの未来を見据える人も、Xとイーロン・マスク氏の動きからは目が離せない。今まさに、ソーシャルメディアの枠組みが再定義されようとしている。


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