イーロン・マスク氏が暗号資産(仮想通貨)業界で注目を集めるようになったのは、2020年から2021年にかけての発言と行動による影響が大きい。特に有名なのは、2021年2月にTeslaが15億ドル相当のビットコイン(BTC)を購入し、一部製品の購入にビットコイン(BTC)決済を受け入れると発表したことだ。このニュースを受け、ビットコインの価格は急騰した。
その後、Teslaが環境負荷を理由にBTC決済を停止したことでも価格が急落するなど、マスク氏の発言は暗号資産市場のトレンドを大きく左右してきた。彼のXでの投稿やコメントは、単なるSNSの一言ではなく、マーケットを動かすトリガーとなっている。
マスク氏の“お気に入り”ともいえるドージコイン(DOGE)にも彼の一挙手一投足が影響を与える。
ジョークから誕生したミームコインであるドージコイン(DOGE)は、イーロン・マスク氏の投稿によってたびたび価格が急騰する現象を繰り返している。その背景には、マスク氏が「DOGEは庶民のための暗号資産(仮想通貨)である」と語るなど、同コインに対する理念的な共感を示している点があげられるだろう。彼の発言が市場に期待感を与え、価格変動の一因となっているのだ。実際、マスク氏が「D.O.G.E」と発言するだけで、ドージコインの価格が10%以上上昇することも珍しくない。
興味深いことに、この「D.O.G.E」という言葉は、米国政府の実在する組織とも関連している。トランプ政権発足後に、連邦政府の官僚主義を排除し、過剰な規制や無駄な支出の削減を目的として設立されたのが「政府効率化省(Department of Government Efficiency)」であり、その頭文字を取れば「D.O.G.E」だ。
マスク氏は米政府の上級顧問を務めており、同省の特別職公務員として任用。D.O.G.Eはすでに連邦職員の大規模な削減に着手しており、特に教育省や米国国際開発庁(USAID)などの機関での改革を推進している。年間最大2兆ドルの無駄削減を目標に掲げ、すでに数十億ドル規模の削減を達成したと主張しているようだ。
省庁の名称にユーモアを残しつつ、抜本的な改革を迅速に推進する姿勢には、マスク氏のカリスマ的な経営者としての手腕が表れているといえる。