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暗号資産KAIA(カイア)とは? Klaytn(クライトン)とFinschia(フィンシア)統合の背景と今後を徹底解説!

2025/03/25 22:43
Iolite 編集部
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暗号資産KAIA(カイア)とは?  Klaytn(クライトン)とFinschia(フィンシア)統合の背景と今後を徹底解説!

はじめに

Kaia image

2024年、アジアのブロックチェーン業界において、注目すべき大型統合が発表された。韓国発のレイヤー1ブロックチェーン「Klaytn(クレイトン)」と、シンガポールを拠点とするパブリックチェーン「Finschia(フィンシア)」(旧LINE Blockchain)が統合し、あらたなエコシステム「KAIA(カイア)」を構築するというものである。

これは、単なるネットワークの合併ではなく、Web3.0時代のあらたな経済圏を再構築しようとする壮大な試みであり、両チェーンが有する技術・ユーザーベース・パートナーシップの統合によって、アジア最大級のブロックチェーン基盤が誕生することになる。

本稿では、クレイトンとFinschia(フィンシア)それぞれの背景と特徴、統合の目的、KAIAの仕組みと新トークンの設計、今後の展望と課題までを包括的に解説する。

クレイトン(Klaytn)とは何か?

Klaytnは、韓国のインターネット大手「カカオ(Kakao Corp.)」傘下のブロックチェーンプラットフォームとして2019年にローンチされたレイヤー1チェーンである。初期段階から企業向けユースケースを重視し、トランザクションの高速処理と低コスト、そしてユーザーにとってフレンドリーなUX設計が特徴とされていた。

また、Klaytn財団は香港を拠点に、グローバル展開にも力を入れており、DeFi、NFT、GameFiといった分野でも独自のエコシステムを構築してきた。ネイティブトークンである「KLAY」は、ネットワーク手数料の支払いに使用される他、ステーキングや報酬設計にも組み込まれている。

「Finschia(フィンシア)」(旧LINE Blockchain)の概要

LINE image

一方、Finschia(フィンシア)は、メッセージングアプリ「LINE」を運営するLINE株式会社の子会社であるLINE Tech Plusによって開発されたブロックチェーンであり、元々は「LINE Blockchain」という名称で2020年にローンチされた。

同チェーンは、LINEの月間アクティブユーザー数(MAU)1億8,000万人を活用したWeb3.0アプリケーションの開発プラットフォームとして、ユーザーが意識せずにブロックチェーン機能を利用できるUXを重視していた。ネイティブトークン「FNSA(Finschia Network Standard Asset)」は、トランザクション手数料やガバナンス投票に使用されていた。

Finschiaは、LINEと提携する企業・ゲーム・NFTプロジェクトを多数抱えており、日本・韓国・台湾・タイなど、アジアを中心にしたWeb3サービスの実装基盤として成長してきた。

統合の背景 なぜ今、2つのチェーンが1つに?

Klaytn(クレイトン)とFinschia(フィンシア)の統合の背景には、Web3.0市場における「スケールと持続性」の課題がある。近年、レイヤー1チェーンの競争は激化しており、Solana、Avalanche、Cosmos、そしてEthereumを軸としたL2チェーン群の急成長により、新興チェーンは「ユーザー確保」「開発者エコシステムの拡大」「TVL(ロックされた資産の総額)」の点で苦戦を強いられている。

特にアジアにおいては、各国の規制状況が異なる中でユーザーの信頼を獲得し、実用的なユースケースを創出することが求められている。KlaytnとFinschiaは、共に強力な企業バックグラウンドと地域コミュニティを持つが、単独ではグローバル競争に対応しきれないという危機感があった。

そのため、「アジア発の持続可能なWeb3.0エコシステム」を目指し、技術資源、開発者、パートナーシップを統合するという選択肢に踏み切ったのである。

あらたな暗号資産「KAIA(カイア)」の誕生

tool image

統合後、両チェーンのネイティブトークンである「KLAY」と「FNSA」は、あらたなトークン「KAIA(カイア)」へと移行される予定である。このトークンは、新統合チェーンの手数料支払、ガバナンス、ステーキング、報酬分配といった基本的なユースケースに対応する。

KAIAトークンの概要

2024年8月にメインネットがローンチされ、KLAYおよびFNSAという既存の2トークンはKAIAへ統合された。KAIAは、Kaiaチェーン上での取引手数料支払いやステーキング(ブロック生成)に使用される基軸資産として位置づけられており、そのトークン設計は、インフレ率やトークンバーン(焼却)モデルを含め、長期的な持続可能性を意識したものとなっている。

供給量と交換比率

当初、KAIAの供給は約100億枚が想定されていたが、未流通分の完全焼却により、実際の初期供給量は約57.68億枚に抑えられた。これは、統合時点でのKLAYおよびFNSAの既存流通分のみを反映した数値である。

交換レートは以下の通りであった:

  • KLAY:1 KLAY = 1 KAIA
  • FNSA:1 FNSA ≒ 148.08 KAIA

これにより、両トークンの全流通量がKAIAへ自動的に変換され、ユーザー側での手続きは不要であった。

インセンティブ施策

KAIAのローンチに伴い、既存ユーザーおよび開発者に対する大規模なインセンティブプログラムが展開されている。

ユーザー向けには「Kaia Portal ミッション」というDeFi参加型ポイント制度が導入され、最大5,000万KAIA相当の報酬プールが設けられた。また、Finschia統合投票に参加したユーザーには別途4,000万KAIAが「オンチェーン貢献者報酬」として割り当てられている。

開発者向けには、LINE NEXTとKaia財団が共同で開始した「Kaia Wave」プログラムにより、総額1,000万ドル相当のKAIA支援枠が提供されており、有望なWeb3プロジェクトに対して資金・マーケティング・インフラ支援が行われている。

トークン配分とインフレモデル

初期流通分の57.68億KAIAは、以下のように配分された:

  • 既存流通分の転換(KLAY+FNSA):約49.68億KAIA(全体の約86%)
  • LINE NEXT向け:3.30億KAIA(約5.7%)
  • Kaiaエコシステム基金:2.70億KAIA(約4.7%)
  • Kaiaインフラ基金:2.00億KAIA(約3.5%)

さらに、ネットワーク運用に伴うブロック報酬として、年間5.2%のインフレが設定されており、これがバリデータ報酬やステーキング報酬として配分される。

また、3段階のバーンモデル(ガス代の一部、報酬の一部、自主バーン)を採用しており、ネットワーク利用量に応じて実質的なインフレ率が抑制される設計となっている。

統合チェーンの特徴とメリット

KAIAチェーンは、KlaytnとFinschiaの技術的優位性を併せ持つ次世代型L1ブロックチェーンとして開発される予定である。想定される主な特徴は以下の通りである。

高速かつ低コストな処理能力

・Klaytnで実装済みの高性能BFT(Byzantine Fault Tolerant)ベースの合意アルゴリズムを継承
・商用レベルでのdApp運用に耐えるスループット

豊富なユースケースと既存パートナーの移行

・LINEのdApp、ゲーム、NFTサービスがそのままKAIA上に移行
・Klaytn財団が支援してきたDeFiプロジェクトも統合対象

アジア圏の法規制への適応力

・韓国と日本での暗号資産規制に精通した運営体制
・カカオおよびLINEの法人ネットワークによる政治的安定性

開発者フレンドリーなSDK・EVM互換

・Ethereum Virtual Machine(EVM)との互換性を維持
・マルチチェーン展開にも対応可能な開発者ツール群

課題と懸念点:トークン移行・統合の不確実性

大規模なチェーン統合には、多くのメリットがある一方で、課題や不確実性も存在する。特に以下のような点に注目すべきである。

ユーザー混乱とトークン移行リスク

KLAYおよびFNSAの保有者にとって、KAIAへの交換プロセスは一つのハードルである。ウォレットの対応、取引所でのサポート、税務処理など、技術面と運用面の両方においてスムーズな対応が求められる。

コミュニティの統合

両チェーンは異なる文化・ユーザーベースを持っており、統合によって一方が優先される印象を与えると、支持を失うリスクがある。そのため、統合後のガバナンス設計と情報発信の透明性が非常に重要である。

セキュリティと信頼性の維持

チェーン統合に伴うコードベースの変更やノード運用の切替において、セキュリティリスクが増大することが予想される。既存のdAppが統合後も正常に機能するためには、入念なテストと段階的な移行が不可欠である。

今後の展望 KAIAはアジアのWeb3.0基盤となるか?

Web3.0 image

KAIAは、アジア圏で最大級のユーザーベースと法人ネットワークを擁するブロックチェーン基盤として、今後の展開が期待されている。特に注目されるポイントは以下の通りである。

・日本・韓国・台湾における規制準拠dAppsの拡大
・Web3.0ゲームやNFTマーケットの商用展開
・Web2.0サービス(LINE、カカオトーク)とのシームレスな統合
・ステーブルコイン発行や金融機関との連携によるDeFiの拡充

もしKAIAがこれらを実現し、ユーザーにとって「使えるブロックチェーン」として定着すれば、SolanaやAvalancheと並ぶ次世代基盤として国際的な評価を得る可能性がある。

まとめ KAIA統合はアジアWeb3.0戦略の試金石である

Klaytn(クレイトン)とFinschia(フィンシア)の統合、そして新仮想通貨KAIAの誕生は、単なるプロジェクトの合併ではない。これはアジアにおけるWeb3.0の未来を担うインフラの再構築であり、競争激化するグローバル暗号資産市場に対する挑戦である。

統合によって得られるスケールメリットと実利用の可能性は大きい一方で、トークンの移行、ガバナンスの設計、コミュニティマネジメントなど、乗り越えるべき課題も少なくない。

しかし、LINEとカカオという東アジアを代表する企業グループが後ろ盾となっている以上、KAIAは一過性の話題にとどまらず、長期的な視野で注目すべきWeb3基盤であることは間違いない。今後の正式ローンチとトークン配布、プロジェクトの進行状況に注視していく必要がある。

画像:Shutterstock


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