統合後、両チェーンのネイティブトークンである「KLAY」と「FNSA」は、あらたなトークン「KAIA(カイア)」へと移行される予定である。このトークンは、新統合チェーンの手数料支払、ガバナンス、ステーキング、報酬分配といった基本的なユースケースに対応する。
KAIAトークンの概要 2024年8月にメインネットがローンチされ、KLAYおよびFNSAという既存の2トークンはKAIAへ統合された。KAIAは、Kaiaチェーン上での取引手数料支払いやステーキング(ブロック生成)に使用される基軸資産として位置づけられており、そのトークン設計は、インフレ率やトークンバーン(焼却)モデルを含め、長期的な持続可能性を意識したものとなっている。
供給量と交換比率 当初、KAIAの供給は約100億枚が想定されていたが、未流通分の完全焼却により、実際の初期供給量は約57.68億枚に抑えられた。これは、統合時点でのKLAYおよびFNSAの既存流通分のみを反映した数値である。
交換レートは以下の通りであった:
KLAY:1 KLAY = 1 KAIA FNSA:1 FNSA ≒ 148.08 KAIA これにより、両トークンの全流通量がKAIAへ自動的に変換され、ユーザー側での手続きは不要であった。
インセンティブ施策 KAIAのローンチに伴い、既存ユーザーおよび開発者に対する大規模なインセンティブプログラムが展開されている。
ユーザー向けには「Kaia Portal ミッション」というDeFi参加型ポイント制度が導入され、最大5,000万KAIA相当の報酬プールが設けられた。また、Finschia統合投票に参加したユーザーには別途4,000万KAIAが「オンチェーン貢献者報酬」として割り当てられている。
開発者向けには、LINE NEXTとKaia財団が共同で開始した「Kaia Wave」プログラムにより、総額1,000万ドル相当のKAIA支援枠が提供されており、有望なWeb3プロジェクトに対して資金・マーケティング・インフラ支援が行われている。
トークン配分とインフレモデル 初期流通分の57.68億KAIAは、以下のように配分された:
既存流通分の転換(KLAY+FNSA):約49.68億KAIA(全体の約86%) LINE NEXT向け:3.30億KAIA(約5.7%) Kaiaエコシステム基金:2.70億KAIA(約4.7%) Kaiaインフラ基金:2.00億KAIA(約3.5%) さらに、ネットワーク運用に伴うブロック報酬として、年間5.2%のインフレが設定されており、これがバリデータ報酬やステーキング報酬として配分される。
また、3段階のバーンモデル(ガス代の一部、報酬の一部、自主バーン)を採用しており、ネットワーク利用量に応じて実質的なインフレ率が抑制される設計となっている。
統合チェーンの特徴とメリット KAIAチェーンは、KlaytnとFinschiaの技術的優位性を併せ持つ次世代型L1ブロックチェーンとして開発される予定である。想定される主な特徴は以下の通りである。
高速かつ低コストな処理能力 ・Klaytnで実装済みの高性能BFT(Byzantine Fault Tolerant)ベースの合意アルゴリズムを継承 ・商用レベルでのdApp運用に耐えるスループット
豊富なユースケースと既存パートナーの移行 ・LINEのdApp、ゲーム、NFTサービスがそのままKAIA上に移行 ・Klaytn財団が支援してきたDeFiプロジェクトも統合対象
アジア圏の法規制への適応力 ・韓国と日本での暗号資産規制に精通した運営体制 ・カカオおよびLINEの法人ネットワークによる政治的安定性
開発者フレンドリーなSDK・EVM互換 ・Ethereum Virtual Machine(EVM)との互換性を維持 ・マルチチェーン展開にも対応可能な開発者ツール群
課題と懸念点:トークン移行・統合の不確実性 大規模なチェーン統合には、多くのメリットがある一方で、課題や不確実性も存在する。特に以下のような点に注目すべきである。
ユーザー混乱とトークン移行リスク KLAYおよびFNSAの保有者にとって、KAIAへの交換プロセスは一つのハードルである。ウォレットの対応、取引所でのサポート、税務処理など、技術面と運用面の両方においてスムーズな対応が求められる。
コミュニティの統合 両チェーンは異なる文化・ユーザーベースを持っており、統合によって一方が優先される印象を与えると、支持を失うリスクがある。そのため、統合後のガバナンス設計と情報発信の透明性が非常に重要である。
セキュリティと信頼性の維持 チェーン統合に伴うコードベースの変更やノード運用の切替において、セキュリティリスクが増大することが予想される。既存のdAppが統合後も正常に機能するためには、入念なテストと段階的な移行が不可欠である。