上場企業が語るWeb3.0戦略の現在地──「OKJアカデミー」第2回開催レポート

2026/03/19 17:00 (2026/03/19 18:01 更新)
Iolite 編集部
文:Shogo Kurobe
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上場企業が語るWeb3.0戦略の現在地──「OKJアカデミー」第2回開催レポート

第2回目テーマは「日本を代表する上場企業のWeb3.0事業戦略」

東京都港区の港区立産業振興センターにて、国内暗号資産(仮想通貨)取引所OKJが主催するイベント「OKJアカデミー」が開催された。

OKJアカデミーは、暗号資産・Web3.0初心者、またWeb3.0に興味のある学生、金融や投資に興味はあるが暗号資産にまだ触れたことがない人が、暗号資産を始めとするWeb3.0に対する理解を深め合い、障壁をなくすことを目指すコミュニティ。今回のイベントは、昨年10月に開催された第1回に続く形で開催されたものだ。

第2回のテーマは「上場企業のWeb3.0事業戦略の現在地」。NTTドコモ・グローバルや三井物産デジタルコモディティーズ、博報堂キースリー、セブン銀行、野村ホールディングスといった名だたる企業が参加し、日本企業によるWeb3.0ビジネスの取り組みや今後の展望について議論が交わされた。

OKJ Academy Second time

では、日本を代表する企業はWeb3.0をどのように捉え、どのようなビジネス機会を見据えているのだろうか。本レポートでは、当日のセッション内容をもとにその議論を振り返っていく。

インフラとトークン発行からみるWeb3.0の実装可能性

今回のイベントでは、上場企業によるWeb3.0関連の取り組みを紹介するピッチセッションと、それを踏まえて参加者同士が議論を深めるワークショップが組み合わされた構成となった。

まず前半では、NTTドコモ・グローバルと三井物産デジタルコモディティーズによるピッチが行われ、その内容をもとに参加者がグループごとに議論するワークショップが実施された。その後、博報堂キースリー、セブン銀行、野村ホールディングスによるピッチが続き、後半でも同様にワークショップ(後半)が行われ、参加者同士がWeb3.0の実践的な活用について意見を交わした。

NTTドコモ・グローバルが描くユニバーサルウォレットの構想

NTTドコモグローバルの稲川氏は、同社のWeb3.0事業が「ユニバーサルウォレットインフラ」と「バリデータ事業」の2本柱で構成されていることを説明。なかでも注目されたのが、暗号資産やステーブルコインに加え、デジタル化したチケットなどのデジタル資産、さらに本人認証に必要なアイデンティティ情報を1つのウォレットで扱う「ユニバーサルウォレット」の構想である。

NTT Docomo

現在のインターネットでは、ユーザーがサービスごとに個人情報を提供し、その情報を各事業者が保有する構造が一般的である。これに対し稲川氏は、「今後はユーザー自身が情報を管理し、必要に応じて企業へ提示する自己主権型のモデルへ移行していくべきだ」と語った。こうした基盤が整えば、企業間の連携も進み、サービス利用の利便性は大きく向上するとの考えを示した。

また、もう1つのバリデーター事業では、複数のブロックチェーンでノード運営を行い、取引検証を通じてネットワーク維持に関与していることを紹介した。通信インフラ企業として、Web3.0でもアプリケーションではなく基盤提供側に立つ姿勢が印象的であった。

三井物産デジタルコモディティーズが語る「実物資産のトークン化」

続いて登壇した三井物産デジタルコモディティーズの辰巳氏は、同社が手がける金(ゴールド)と価値連動することを目指す暗号資産「ジパングコイン」を軸に、トークン発行ビジネスの現在地を説明した。2022年に金連動型、2023年には銀やプラチナ連動型の暗号資産を発行しており、暗号資産市場におけるあらたなアセットクラスとして位置付けている。

同氏は、こうした事業の立ち上げが決して平坦ではなかったことも明かした。国内でのトークン発行には厳格な規制対応が求められ、検討開始からローンチまで約5年を要したという。その上で、同社にとって重要なのは金そのものではなく、将来的に三井物産グループが持つ鉱山、エネルギー資産、船舶などを含む多様な実物資産をトークン化していくことにあると語った。

さらに「オンチェーン金融」というキーワードにも触れ、最終的には株式、債券、不動産、コモディティなどが一つの基盤上で扱える世界の方が利便性は高いとの見方を示した。法整備は途上にあるものの、そうした未来に向けた実装が徐々に進みつつあることを印象付けた。

前半ワークショップ:ユニバーサルウォレットとトークン発行を参加者が議論

前半ピッチ終了後には、登壇内容を踏まえたワークショップが実施された。参加者はグループごとにわかれ、NTTドコモ・グローバルの「ユニバーサルウォレット」「バリデーションビジネス」、三井物産デジタルコモディティーズの「トークン発行」「オンチェーン金融」といったテーマから1つを選び、それぞれの視点で議論を深めた。

特にユニバーサルウォレットについては、決済や本人確認、各種デジタル資産を一元管理できる利便性が評価された一方、スマートフォン紛失時のリスクやセキュリティ、導入事業者をどう増やすかといった課題もあがった。

また、トークン発行では米やライブチケットなど身近な対象をトークン化するアイデアが出され、オンチェーン金融では既存の銀行インフラとブロックチェーンの接続可能性にも議論が及んだ。

顧客接点、ATM、教育から広がるWeb3.0の社会実装

後半では、博報堂キースリー、セブン銀行、野村ホールディングスの3社が登壇し、Web3.0の活用領域が金融やインフラにとどまらず、マーケティング、日常導線、情報発信へと広がっていることを示した。

博報堂キースリーが示す「金融×マーケティング」の可能性 

博報堂キースリーの重松氏は、ブロックチェーンを「改ざん困難なデジタル証明基盤」と整理し、それを企業と顧客のあらたな関係性構築に活かす視点を提示した。特に強調されたのが、ブロックチェーンを活用したデジタル社債である。従来の社債は証券会社経由で販売され、発行企業が購入者を十分に把握できなかったが、自己募集型のデジタル社債であれば企業が顧客と直接つながることができる。

また、不動産セキュリティトークンについても、利回りだけでなく、ブランドや体験価値を付与することで商品性を高められるのではないかと提案した。Web3.0は単なる資金調達手段ではなく、ロイヤル顧客との継続的な接点をつくる仕組みにもなり得るという見方が印象的であった。

セブン銀行が進めるATMを起点としたWeb3.0戦略

セブン銀行の山方氏は、ATMを単なる現金の入出金端末ではなく、“生活者とのコミュニケーション接点”として再定義する構想を語った。すでに同行では、ATM利用者に対してNFTを配布するマーケティングサービスを事業化しており、参加証明や行動履歴の管理にNFTを活用している。利用者にとってはデジタルスタンプのような体験である一方、事業者側は個人情報を取得せずに行動を把握できる点が特徴だ。

さらに今後については、ATMをステーブルコインと法定通貨を接続する「入口と出口」にしていきたいと説明した。特に訪日外国人が持つステーブルコインを日本円現金へ交換する導線など、グローバルな利用を見据えたユースケースは現実味がある。加えて、ATMの現金偏在という現実のオペレーション課題にDAO的な仕組みを組み合わせる案も披露され、Web3.0を極めて実務的な形で使おうとする姿勢が際立っていた。

 

野村ホールディングスが担うWeb3.0の「入口」 

野村ホールディングスの松永氏は、同社が運営する情報メディア「Web3ポケットキャンパス」の取り組みを紹介し、Web3.0の社会実装にはリテラシーの底上げが不可欠だと語った。日本では信用基盤が比較的安定しているため、改ざん耐性やトラストレスな仕組みの価値が直感的に伝わりにくい。そのため、技術を説明するだけではなく、実際の課題解決につながる事例を積み上げる必要があるという。

物流、エネルギー、メディア、音声AIなど、複数の事例をあげながら、ブロックチェーンは「使う必然性」がある場面でこそ力を発揮すると整理した。また、ユーザーにはWeb3.0を意識させず、LINEや既存UIのなかに自然に溶け込ませる設計が重要であるとの指摘もあり、これは他登壇者の話とも共通する論点であった。

後半ワークショップ:生活者視点と社会課題からWeb3.0活用を発想

後半ワークショップでは、博報堂キースリー、セブン銀行、野村ホールディングスのピッチを踏まえ、さまざまな活用案が発表された。

デジタル社債や不動産セキュリティトークンについては、利回りだけでなく体験価値やファン性をどう組み込むかが議論され、ATM活用のテーマでは、手数料無料やクーポン配布など、生活者にとってわかりやすいインセンティブが支持された。

また、社会課題の解決という観点からは、DAOやポイント経済圏を活用して地域コミュニティや福祉を支える仕組みの可能性も示された。Web3.0を実際の暮らしや社会課題にどう接続するかという視点が色濃くあらわれたワークショップであったといえる。

参加者と事業者の対話が生んだ活発な議論

今回のイベントで特に印象的だったのは、ワークショップにおける参加者の熱量である。

各チームは提示されたテーマに対して真剣に向き合いながらも、自由な発想のもとでアイデアを出し合い、議論そのものを楽しんでいる様子がうかがえた。

ウォレットやトークン発行、社会課題の解決など、それぞれのテーマに対して多様な視点から意見が交わされ、Web3.0の可能性を参加者自身が主体的に考える場となっていた。また、登壇した事業者側も参加者の発表に真剣に耳を傾け、講評のなかで具体的なフィードバックを返していた点も印象的だった。

OKJの齋藤氏はイベント実施に伴い、「今回は上場企業の皆様やパートナーのご協力により実現した取り組みです。セミナー形式のように知識をインプットするだけでなく、ワークショップを通じてすぐにアウトプットすることで理解が深まり、参加者同士のコミュニケーションも生まれていました。多様な視点からさまざまなキーワードがあがり、ブロックチェーンの可能性の広がりを改めて感じています。今後、金融商品取引法への移行など規制環境の変化が見込まれる中でも、こうした対話の場からあらたなイノベーションが生まれていくことを期待しています」と語った。

企業の取り組みと参加者のアイデアが交差することで、議論はより実践的なものへと深まっていたように感じられる。こうした対話の場が今後どのような気付きやあたらしい発想を生み出していくのか。次回、第3回の開催にも期待したい。

画像:Iolite編集部、OKJ

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