【渋谷Web3大学イベントレポート】エンタメは“連続体験”へ進化する—— 8shipsとサンリオの現場から読み解くWeb3.0活用

2025/11/20 17:00
Iolite 編集部
文:Noriaki Yagi
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【渋谷Web3大学イベントレポート】エンタメは“連続体験”へ進化する—— 8shipsとサンリオの現場から読み解くWeb3.0活用

8shipsとサンリオが示した、リアルとデジタルを結ぶ新基準

Shibuya web3 University image1

渋谷Web3大学は2025年11月19日、Season2の第3回リアルイベント(通算34回目)として、「Web3×エンタメで創る、体験がつながる未来 〜RIZE3x EXPO実施報告から学ぶ、リアルとデジタルを融合する新しい可能性〜」というタイトルのイベントを開催した。

渋谷スクランブルスクエア45階 WeWorkにて行われ、会場参加のみの形式で実施。

登壇者は、都市全域を舞台にした体験フェスティバル「RIZE3x EXPO」を主導した8shipsの枡井 優太氏とサンリオ デジタル事業開発部の野地 航氏である。

RIZE3x EXPOでは「テクノロジー×ストーリーテリング」を軸に、アート・カルチャー・都市をつなぐ体験設計が展開され、サンリオは「Sanrio Virtual Festival」「おしきゅん」「はぴウェル応援団」といったXR・Web3.0領域の取り組みを紹介し、幅広い世代へあたらしいエンタメ体験を届ける挑戦を語った。

リアルとデジタルを横断する体験設計、XRやWeb3.0を活用したあたらしいエンターテインメントの展望、そして“体験が次の体験につながる仕組み”の実践的知見が共有されたイベントである。

8ships:体験をつなぐ“エクスペリエンスカンパニー”が示した新しい都市体験

最初に登壇したのは、8ships JAPAN Partner Relationの枡井優太氏である。CEO Terry Tomonaga氏の思想を引き継ぎながら、RIZE3x EXPOの設計思想を紹介した。

8shipsが掲げるミッションは「テクノロジーとストーリーテリングを融合し、体験を連鎖させる」ことだと語る。大阪で開催されたRIZE3x EXPOは、その思想を都市規模で実装した大規模プロジェクトだ。

大阪全域500ヵ所を舞台に、来場者は“体験の証明”となるバッジを獲得しながら物語を進めていく。梅田の解体予定ビルを9階丸ごと使ったアドベンチャー空間では、アート・カルチャー・テクノロジーが結びつき、階層ごとに異なる世界観が展開された。

この体験設計の核心は、Web3.0を全面に出すのではなく、「Web3.0を感じさせずに使わせる」点にある。

QRコードやGPSを使ったバッジ取得は、来場者にとって“スタンプラリーの進化版”として自然に受け入れられた。結果として、Web3を知らない子どもから高齢者、外国人旅行者までが、抵抗なくデジタル証明を獲得しながら体験を進めることができたのだろう。

また、体験データの蓄積が“ファンの深度”を可視化する点も特徴的である。単に来場したかではなく、どの体験をどの順番で深めたかが明確になる。この設計は、ブランドが「誰が本物のファンか」を理解するあたらしい手段となる。

枡井氏は、次のフェーズとして「デジタル体験プラットフォーム」構想を語った。2026年以降、リアルに来場できない人も、事前のプロローグ体験やストーリーに参加できるようにする計画である。

リアルとデジタルの境界をなくし、体験が多層的に連鎖する世界の実現を目指す姿勢が印象的であった。

サンリオ:思い出と推し活をアップデートするXR・UGX・Web3.0の挑戦

SANRIO image
Iolite Vol14 誌面記事より引用(提供:株式会社サンリオ)

続いて登壇したのは、サンリオ デジタル事業開発部の野地航氏である。サンリオのデジタル戦略は、「キャラクター企業」ではなく「思い出をプロデュースする企業」としての進化を目指したものだ。

同社の企業理念「みんななかよく」は創業者の戦争体験に基づいており、IPは単なる商品ではなく人生の記憶に寄り添う存在として位置付けられている。そのため、サンリオのデジタル戦略は、XR・UGX・コミュニティの3領域が軸となる。

XR領域では、世界最大級のバーチャルフェス「Sanrio Virtual Festival」を展開し、2024年の年間アクセスは400万にのぼった。現在は、24時間365日アクセス可能な“常設バーチャルピューロランド”を準備中だ。

UGX領域では、ファンアート投稿サービス「キャラフォリオ」を展開。クリエイターの権利と世界観を守りつつ、UGCを促進する仕組みを整えている。これはAI時代における「総人口クリエイター社会」を見据えた取り組みである。

コミュニティ領域では、推し活応援アプリ「おしキュン」を運営し、ファン活動を可視化する仕組みを拡張している。ここにも「応援の証明」というWeb3的価値観が通底しており、今後バッジ型の構造を本格実装する予定という。

RIZE3x EXPOでは、360度のVRサンリオパレード体験や、来場者がサンリオの思い出を書き込む壁が人気を集めた。子どもから大人、海外来場者まで、思い出が空間に可視化される光景は、IPが「個人の記憶」と強く結びついていることを象徴していた。

クロストークが示した“日本の体験価値”のポテンシャル

最後のパネルディスカッションでは、Web3大学学長の北村元氏がモデレーターを務め、両登壇者の原点と未来観が語られた。

枡井氏は、15年前から体験が人を変える瞬間をデザインしてきた経験を述べ、Web3.0がその証明・拡張を可能にすると語った。野地氏も「技術そのものより、使う文脈が価値を生む」と強調し、Web3の本質は“共創”を支える仕組みにあると指摘した。

両者に共通するのは、日本の文化・IP・体験設計には、世界に通用する独自性があるという認識である。

AIが普及し誰もがクリエイターになる社会において、Web3.0は“体験の履歴”を証明し、ファンや参加者の関係を深化させるレイヤーとして機能する。

体験が連続し、文化が循環し、参加者が共創者となる世界。そのプロトタイプが、RIZE3x EXPOには確かに存在していた。

体験は「点」から「線」へ──その先の未来へ

今回のイベントで浮かび上がったのは、Web3.0が「あたらしい体験経済の基盤」として再定義されつつあることである。

8shipsが示した都市規模の体験連鎖、サンリオが描く思い出と推し活の拡張。そのどれもが、テクノロジーありきではなく、人の“感情”を中心に設計されていた。

体験は単発では終わらない。点が線へとつながり、線が面となり、ファンコミュニティや文化があたらしく生成されていく。

画像:Iolite編集部

公式サイト渋谷Web3大学

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