初日、最初にメインステージで行われたセッションには、CME、Bitwise、Circle、Binanceから4名が登壇し、機関マネーがどのようにデジタル資産市場へ浸透しているかを議論した。
CMEグループのティム・マコート(Tim McCourt)氏は、ETH、SOL、XRP先物の建玉残が過去最高を更新したと述べ、SOLはビットコインが約3年かかった水準に5ヵ月で到達したと報告。デリバティブ市場がエコシステムの流動性を底支えしている実態を示した。
また、Circleのヒース・ターバート(Heath Tarbert)氏は、ステーブルコインを「銀行の敵ではなくパートナー」と定義。USDCの準備資産は何十億ドル単位で銀行システムに預けられており、支払い用ステーブルコインは利息を払わず、ほかの資産への入口になるとし、銀行がUSDCと統合しあらたなトークン化金融商品を提供すべきだと述べた。
Circle Heath Tarbert氏そして、会場を沸かせたのがBinanceのリチャード・テン(Richard Teng)氏である。
「規制の明確化を受け入れたことで物語が変わった」と切り出し、機関のオンボーディングが前年比2倍以上に増加していると報告した。
その背景には、取引所という立場を超えたマーケット・プレイス型インフラへの転換がある。
Binanceは今年、「Crypto as a Service」を正式ローンチした。これは銀行や証券会社が自社ブランドで暗号資産取引を提供できるホワイトラベルモデルであり、KYCなどの規制対応は各社が行う一方、現物・先物・清算・流動性供給はBinanceが支える。
テン氏はまた、中央集権取引所(CEX)と分散型取引所(DEX)の対立構図を否定し、「CeDeFi(Centralized + DeFi)」というハイブリッド路線を明確にした。
求められるコンプライアンスが厳しい機関投資家にはCEXが向くが、非カストディ製品やWeb3.0ウォレットなどを通じ、CEXとDEXの長所を融合させていくと説明。実際、同社の「Binance Web3 Wallet」はノンカストディアルウォレットとして急成長している。
加えて直近2025年10月9日には、キャッシュレス決済大手のPayPayがBinance Japanに40%出資し資本業務提携を締結。両社は「PayPayマネー」で暗号資産の売買・出金が可能な連携を進め、日本発のWeb3.0金融サービス拡充を目指している。
同氏の締めくくりは、「政府や金融機関が当社を“流動性の基盤”として認識し始めた。世界3億人のユーザーに向けた共通インフラとしての信頼を築く段階にある」「CEXとDEXの共創が業界を成熟させる」というメッセージであった。
Binance Richard Teng氏制度対応と分散志向を二項対立ではなく連携とみなす視点が、Binanceのグローバル戦略の中核にある。