仮想通貨「TRUMP(トランプコイン)」とは何か?トランプ大統領との関係性とトランプコインの将来性

2025/07/17 18:39 (2025/07/17 18:50 更新)
Iolite 編集部
文:Iolite 編集部
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仮想通貨「TRUMP(トランプコイン)」とは何か?トランプ大統領との関係性とトランプコインの将来性

「TRUMP(トランプコイン)」の概要

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暗号資産(仮想通貨)「トランプコイン(TRUMP)」とは、米国第45代・47代大統領であるドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が自ら関与したとされる、2025年1月に就任式直前に公開した暗号資産である。

いわゆるインターネット上のミーム(話題)に着想を得たミームコインに分類され、法定通貨や株式のような本質的価値は持たない投機的な暗号資産である。

総発行枚数は10億枚と定められ、そのうち約20%(2億枚)が公開時に市場へ供給され、残り約80%(8億枚)はトランプ氏の関連企業によって保有・ロック(売却不可の凍結)されて海外取引所等へ上場された。これは通常の暗号資産プロジェクトと比べ非常に偏った配分であり、発行者側にトランプコインが集中している点が特徴となっている。

大統領自身が立ち上げた“公式”ミームコイン

過去にもトランプコインと称する暗号資産は存在したものの、トランプ支持者が立ち上げた非公式のミームコインであり、トランプ家は2022年になってこれに「我々とは無関係であり使用を許可していない」と表明して法的措置も示唆していた。

それに対し2025年に登場したトランプコインは、トランプ氏自身がSNSを通じて発表・宣伝し、陣営ぐるみで推進する事実上初のトランプ公式コインとして市場からは認識された。いわばトランプコインは大統領の知名度と支持熱を資金化する試みとして、生み出された暗号資産といえるだろう。

ミームコインとしての特徴

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ミームコインとは、かぼすちゃんという柴犬を用いたドージコイン(DOGE)やカエルをモチーフにしたPepe(PEPE)のように、ネット上の流行ネタや著名人を題材としたジョーク的性格の暗号資産である。

基本的に事業の裏付けや資産的価値を持たず、需要と話題性のみで価格が上下するため極めてボラティリティ(変動幅)が大きい。トランプコイン(TRUMP)も名称が示す通り、トランプ大統領をテーマにしたミームコインであり、その価格動向や人気もトランプ大統領をめぐる世間の関心やコミュニティの熱狂に強く左右される。

ほかのミームコインとの違い

ほかのミームコイン同様、トランプコインは登場直後に投機的な人気が沸騰した。実際、世界大手の暗号資産取引所の大半(Binance、Coinbaseなど)がトランプコイン公開から平均4日という異例の早さで取り扱いを開始しており、通常ほかのミームコインでは上場まで平均130日程度要することと比較すれば極めて迅速だったことがわかる。

取引所各社は「審査を省略したわけではない」と説明しているものの、Bitget社CEOのグレイシー・チェン氏は「暗号業界がトランプコインの熱狂で沸き、ほかのトークンと同様に上場は急務だった」と述べており、市場の強い需要に押されて上場が前倒しされたことがうかがえる。

もっとも、本来であれば発行元にトークンが集中している状況は上場審査上の重大なリスク要因となる。トランプコインでは総供給の80%をトランプ一家および提携先が保有するという極端な偏りがあり、本来ならインサイダーによる大量売却で価格崩壊を招きかねない危険水準になるはずだが、今回それも黙認されたようにみえる。このように通常では考えにくい展開が起きた点からも、トランプコインが政治的な話題性によって特異な扱いを受けたミームコインであることが分かる。

トランプ大統領本人との関係性

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トランプ大統領は自身のSNSアカウントでこのプロジェクトの立ち上げを公表し、自ら積極的にプロモーションを行った。トランプコインの発行主体となるのはトランプ大統領の関連企業とされ、ロックされていた8億枚のトークンは主にCIC Digital LLCおよびFight Fight Fight LLCという2つの法人に保管されている。

トランプ氏の関与と資産構造の全貌

これらはいずれもトランプ氏の長年のビジネス・パートナーであるビル・ザンカー(Bill Zanker)氏が運営する会社であり、発行元の内情はトランプ大統領の側近筋によって掌握されているといえる。

こうした体制のもと、トランプコイン(TRUMP)はトランプ一族に巨額の経済的利益をもたらしている。暗号資産リスク分析会社Gauntletの推計によれば、トランプ大統領は2025年6月半ばまでにトランプコインの売買を通じて約1億5,000万ドル(約210億円)の利益をあげていたとされ、さらに同年7月に一部ロック解除された自身の保有分の評価額約9,300万ドル(約130億円)があらたに資産に加算される見込みである。

このロック解除に伴い、トランプ氏の公式な純資産額は約64億ドルから約93百万ドル分押し上げられると報じられている。要するに、トランプ氏は大統領在任中に自ら立ち上げた暗号資産プロジェクトによって莫大な私的収益を得ている状況といえる。

保有者向け特典と倫理的論争

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さらにトランプ大統領は、トランプコイン保有者に対して前例のない優遇措置も講じている。2025年5月、ワシントン近郊の自身のゴルフクラブにトランプコイン保有量トップ220名の投資家を招待し、大統領夫妻同席の晩餐会を開催した。なかでも上位25名の“大口保有者”にはトランプ大統領との個別交流やホワイトハウス特別見学ツアーが用意され、「世界で最も排他的な招待状」と銘打たれたこのVIPイベントは事実上トランプコインの保有額に応じて大統領へのアクセス権を得るような試みであった。

実際、晩餐会の開催については倫理監視団体などから「汚職がリアルタイムで展開しているのを目撃しているようだ」と厳しく批判され、オバマ政権で倫理担当顧問を務めたノーム・アイゼン氏も「倫理の悪夢だ」と非難するなど、政治と利害が交錯するあらたな腐敗の形態として物議を醸した。

さらに、この晩餐会を通じて、外国資本による影響工作の問題も浮き彫りになっている。Bloombergの分析によれば、TRUMP保有量トップ25名のうち少なくとも19名は米国外の人物が占めており、海外の富裕層がコイン購入を通じて大統領への影響力を事実上「買っている」状況が明らかになった。

実例として、中国出身の暗号資産起業家であるジャスティン・サン(Justin Sun)氏はトランプコインの最大保有者の一人で、5月の晩餐会にも招待されトランプ氏からブランド物の腕時計を贈呈されるなど厚遇を受けた。

サン氏は自身のブロックチェーン企業にトランプトークンを上場させ「TRUMPは“MAGA”(トランプ支持層のスローガン『Make America Great Again』)の通貨だ」と称えるなど協調姿勢を示した。加えて、トランプ大統領関連の新興暗号資産関連企業「World Liberty Financial」のアドバイザーに就任するなど、トランプ陣営との結びつきを強めている。

このようにトランプコインは、国内外の富裕層が大統領本人への接近手段として利用する側面も帯びており、国家安全保障上の懸念すら指摘されているのが現状である。

なお、トランプ政権のホワイトハウスはこうした利益相反や汚職の批判に対し、「大統領の事業資産はファミリートラスト(家族信託)に預けられており、大統領自身は資産運用に直接関与していないため、いかなる利益相反も存在しない」と弁明している。一方、トランプ大統領のオーガナイゼーション側は個別の質問には答えておらず、倫理面の疑問が完全に払拭されたわけではない。

市場動向と価格推移

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2025年1月〜4月におけるトランプコイン(TRUMP)の価格推移チャート。ローンチ直後に急騰した後、春先にかけて大幅下落している様子が読み取れる。

トランプコインは2025年1月17日の公開直後から主要取引所で取引が解禁され、初日から投機的な買いが殺到した。それに伴い、価格は瞬く間に高騰し、公開から2日後の1月19日には1TRUMPあたり75.35ドルという史上最高値を記録している。

トランプコインの価格推移チャートと市場の変遷

この時点で時価総額は約150億ドルに達し、ミームコインとして異例の規模に膨れ上がった。しかしその後は売り圧力に押されて急速に下落へ転じ、3月末から4月初旬にかけて価格は一時7ドル台まで暴落した。2025年7月中旬現在でも1桁台の水準(8〜10ドル前後)に留まっており、ピーク時の価格から約85%も下落した計算になる。この暴落により多くの個人投資家が損失を被る結果となった。

急激な乱高下は投資家心理にも大きな影響を与えた。たとえばドバイ在住の暗号資産投資家でインフルエンサーでもあるカル・ムーン・ルネフェルト氏は、「合衆国大統領がミームコインを立ち上げたので、自分も少し乗ってみようと思った」として、1枚50〜60ドルの価格帯でトランプコインに約30万ドル(約4億2,000万円)投じたものの、後に「これはおそらく自分のキャリアでも最悪の取引の一つになってしまった」と悔やんでいる。このように知名度や話題性に釣られて参入した投資家の多くが、高値掴みの末に大きな痛手を負ったケースが散見される。

市場データからも投資家層の盛衰が読み取れる。トランプコインのユニークアドレスベースの保有者数は、ローンチ当初の約817,000から減少に転じており、2025年7月時点では約637,000まで落ち込んでいる。

また1,000ドル超相当のトランプコインを保有する“大口”アドレス数も、1月19日時点の14.3万から大幅に減少し、現在はわずか1.2万程度と報告されている。これらの数字は、初期の熱狂が冷めて市場参加者の裾野が縮小したこと、特に中小規模の投資家が撤退したことを示唆している。

リスクと注意点

トランプコインへの投資には極めて高いリスクが伴うといっても過言ではない。その主な要因として、以下の点があげられる。

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起こり得るリスク

極端な価格変動

ミームコイン全般にいえることだが、トランプコインも短期的な投機資金の出入りによって価格が乱高下しやすく、急騰の後に急落する典型的パターンを辿っている。実際、初期に高値で参入した個人投資家の大半は暴落によって損失を被り、約71万2,000ものウォレットの合計損失額が43億ドルに達したとの分析もある。

急ピッチな上場や過熱感の裏には常に崩落のリスクが存在し、ボラティリティの高さゆえに資金が一瞬で激減し得る点を十分に認識する必要がある。

供給集中と大量ロック解除

トランプコインの総供給量の約80%はトランプ氏側の企業および協力者グループに初期配分されており、これらは今後3年かけて徐々に市場へ放出(ロック解除)されていく予定である。発行主体や内部者がトークンを大量に保有する状態は、彼らが一度に売却すれば市場価格を暴落させ得る潜在的な危険性を孕む。

一般にトークンのロック解除イベントは新規供給が市場に流入するため弱材料とされ、トランプコインでも2025年7月の大規模アンロック(約9,000万枚=流通量の45%増加)を皮切りに今後段階的な追加供給が控えている。このため、解除スケジュールが近づくたびに売り圧力が意識され、価格下落要因となり得る点に注意が必要である。

無価値に近い投機商品

トランプコインには株式の配当や債券の利息のようなインカムもなく、事業収益や資産に裏付けられた価値も存在しない。需要と話題性だけが価格を支える純然たる投機対象であり、その点はほかのミームコインと共通している。

ニューヨーク州金融当局はトランプコイン発売の前日に消費者向け警告を発し、「こうしたトークンは少数者に支配されることが多く、公的な煽りで価格を吊り上げたあげ句、早期参入の大口が売り抜けて後から入った小口投資家が損失を被るパンプ・アンド・ダンプの温床になりがちだ」と注意喚起した。

実際トランプコインでも、この典型的な構図が発生したことは上述の通りである。したがって購入者は、値動きが基本的に群集心理のみで左右されるギャンブル性の高い商品であることを肝に銘じるべきである。

規制・政治上の不確実性

大統領自らが暗号資産ビジネスを推進する前例のない状況に対し、米国では野党民主党議員や倫理専門家を中心に「腐敗がリアルタイムで展開しているのを目撃しているようだ」といった強い批判が噴出している。

元SEC(証券取引委員会)暗号資産担当アドバイザーのコリー・フレイヤー氏は「取引所は大統領のあたしいコインをホストしてほしいと頼まれて“No”とはいえない。大統領は規制当局トップ人事や法執行の裁量を握っているのだから」と指摘しており、政権による業界支配力が市場の公正さを歪めているとの懸念がある。

実際トランプ政権下では、それまで大半の暗号資産を証券と見なして厳しく規制していたSECが方針を転換し、ミームコインは証券に該当しないとする声明を出すなど規制を緩和する動きがみられる。

このように現在は政権による追い風が吹いているものの、将来的に政権交代や政治情勢の変化で規制スタンスが再び厳格化すれば、トランプコインの取引環境が一変するリスクも否定できない。政治と深く結びついたプロジェクトゆえに、投資家は通常の暗号資産以上に外部要因に左右される不確実性を織り込んでおく必要がある。

今後の見通しと投資判断

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現時点で、トランプコインの先行きには慎重な見方が必要である。2025年半ば時点でミームコイン市場全体が大きく冷え込んでおり、その時価総額は2022年末の約1,190億ドルから約450億ドル程度へ縮小している。

今後の展望と投資判断のポイント

トランプコイン自体もピーク期の熱狂は薄れ、前述の通り保有者数や参加アドレス数も減少傾向にある。今後、この流れを覆すだけの新たな材料や資金流入がなければ、かつてのような価格急騰を再現するのは容易ではないだろう。むしろ向こう数年は定期的なトークンアンロックによる供給増が続くため、需給面では下押し圧力が断続的にかかる展開が予想される。

一方で、トランプ大統領本人および陣営は今なお暗号資産推進に積極的であり、トランプコインについても「MAGA(『アメリカを再び偉大に』)運動の通貨」と位置付けてコミュニティを鼓舞する発言が出ている。

トランプ大統領はトランプコインを含む暗号資産産業をアメリカ経済のあらたな柱に育てる構想を示唆しており、実際に「米国を暗号資産のグローバルリーダーにする」と公言して支持者の期待を煽っている。

そのため、政治的支援が続く限り一定の需要や話題が保たれる可能性もある。またトランプコインは世界の主要取引所で一通り上場済みで流動性が確保されており、買おうと思えば比較的容易にアクセスできる環境にあることは一定の評価を得ているともみれなくない。

総合的にみればトランプコインは非常に投機性が高く不安定な資産であることに変わりはない。価値の源泉はドナルド・トランプ大統領という人物への支持熱・話題性に大きく依存しており、裏を返せばそれ以外に価値を裏付ける要素が乏しい。

いわば政治的「ファントークン」の色彩が強く、長期的な成長性も不透明と言わざるを得ない。投資判断にあたっては以上のリスク要因と将来性を慎重に見極める必要がある。

仮に購入を検討する場合でも、資金のごく一部に留めて最悪ゼロになっても許容できる範囲で臨むのが望ましいだろう。安易に飛び乗れば大きな痛手を負いかねない点を十分に認識しておきたい。

まとめ

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トランプコイン(TRUMP)は、史上初めて現職の国家元首によって公然と立ち上げられた暗号資産であり、その登場はミームコインブームと米国政治が融合した特異な事例となった。

トランプコインは“投機”か“革命”か

大統領の知名度と支持基盤を背景に誕生した本コインは、公開直後に価格と時価総額が急騰し一時は150億ドル規模に達したものの、その後の急落によって多くの個人投資家が損失を抱える結果となった。

トランプ大統領本人とその関係者が大半の供給を握る構造上、同氏らは巨額の利益を得た反面、一般投資家との利益相反や国外資本の流入による政治的影響など数々の倫理的・規制的問題も露呈している。

投資対象としてのトランプコインは、ミームコイン特有の高リスク・高ボラティリティ商品であり、将来的な価値もトランプ氏個人への人気と暗号資産市場の気運に大きく左右される不確実性の高いものである。以上を踏まえ、トランプコインへの投資を検討する際は、政治と金融が交錯するこの新種の暗号資産が孕むリスクを十分に理解し、慎重に判断することが求められる。

画像:Shutterstock


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