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「Web3&AI超会議 inメルカリ」 イベントレポート

2025/04/02 17:10
Iolite 編集部
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「Web3&AI超会議 inメルカリ」 イベントレポート

学生団体WeCreate3とニューラビットが企画

2025年3月29日、学生団体WeCreate3とニューラビットが企画した「Web3&AI超会議 inメルカリ」が開催された。

学生団体WeCreate3は、日本の学生を中心にAIやWeb3.0の認識を広げることを目的としたコミュニティ。この団体は、17の大学(執筆時点)にまたがる最大規模の学生Web3.0コミュニティとして活動しており、今回、慶応義塾大学の学生を中心とする「Neurabit」と本イベントを企画した。

「Web3&AI超会議」では、​​パネルディスカッションからネットワーキングまで最新テクノロジートレンドやキャリアについて楽しく学べるコンテンツを多数用意され、定員470名を大幅に超える参加者に恵まれ、大盛況のなかで行われた。

Web3マスアダプションのすゝめ

Web3 & AI Super Conference in Mercari

最も期待される普及シナリオ

博報堂ミライデザイン事業ユニットJVStudio ビジネスデザインディレクターの森田氏は、Web3.0の普及に関して「ブロックチェーン上で広告商品に対する複数年度にわたるターゲティングメニューを構築可能になること」をあげる。これにより、「これまでプラットフォーマーが独占していたデータを、ユーザー自身が提供することでポイントを獲得できるような、『自分の情報を販売するサイト』の実現が見込まれる」と語った。

KDDI株式会社事業創造本部Web3推進部グループリーダーの笠井氏は、日本においてポイントが特有の文化として根付いている点に着目しており、この文化をうまくブロックチェーンや暗号資産と互換性を持たせることで、数百万人規模の普及が可能ではないかと述べている。さらにいえば、利用者が「ポイント」として認識できるような設計であれば十分であるとの考えを示している。

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session 1

Web3 × 金融の可能性とは

Web3 & AI Super Conference in Mercari

既存の金融システムは、Web3.0によってどのように変革されるのか?

野村ホールディングス株式会社デジタル・アセット推進室 Vice President 宝田氏は、金融機関におけるブロックチェーンの活用について、「決済時のカウンターパーティリスクの軽減や、ミドルオフィス業務の効率化といった可能性が考えられる」と述べた。

しかしながら、現時点においては、すでに極限まで効率化された既存の仕組みをブロックチェーンで置き換えるには、相当な時間を要するであろうとの見解を示している。

Binance Japan株式会社の代表である千野氏は、中央集権型のプレイヤーについては、「社会全体がデジタル化するにつれて、その存在が不要になっていくとの見通しがあるが、現時点では、セキュリティやプライバシーに関する課題が存在しており、過渡期においては中央集権的な事業者がはたすべき役割がある」と述べる。

また、Web3.0領域において、既存金融では実現が困難な取り組みを実験的に行い、それを通じて既存金融にドラスティックな変革の機運をもたらすような動きを加速させたいと語った。

Ava Labs Head of JapanのRoi氏は、「かつて金融業の参入自由化に伴い、インターネットや個人投資家の参入が拡大したように、今後オンチェーン上の取引も同様に活発化する可能性がある」との見通しを示している。

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session 2

Special Speech 「Jupiter(ジュピター)」

Jupiter image

豪華な有識者が登壇するパネルディスカッションに加え、Solana(ソラナ)ブロックチェーン上に構築された分散型取引所(DEX)アグリゲーターであり、DeFi(分散型金融)分野において重要な役割をはたしている「Jupiter(ジュピター)」を代表して、meow, Cat氏によるスピーチも行われた。

同氏は、Web3.0からWeb4.0へと移行しつつある現代において、ソーシャルマネーの時代には、過去のルールに縛られるのではなく、「あたらしいシステム、あたらしいコラボレーション、あたらしいコネクション、そしてあたらしいルールが求められており、それこそがWeb4.0である」と語った。

また、Jupiter(ジュピター)はWeb4.0時代の到来を前提とし、信頼性のあるシステムの構築に注力していることも明らかにした。

さらに、Jupiter(ジュピター)の事業開発において、大切にすべきコンセプトを日本のさまざまなコンセプトやコンテンツからインスピレーションを受けているとして、トヨタの「改善」にみられる継続的な改良の姿勢、『嫌われる勇気』に象徴される自己確立の精神、そして「断捨離」の思想をあげ、これらを重視していると述べた。

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session 3

Web3 × ゲーム・エンタメの最前線とは

Web3 & AI Super Conference in Mercari

Web3.0技術によって、従来のコンテンツ体験はどう変わるのか

​​LINE NEXT Start株式会社Web3 Business日本事業統括本部長の栗原氏は、全体の取り組みとして、共通して使用可能なトークンの発行に注力している事例があり、次のゲームにも活用できる実例が登場してきていることから、ユーザー体験は徐々に変化しつつあると述べた。

同氏によれば、現在LINEメッセンジャー機能を基盤とする「Dappポータル」には全世界で約600万人の利用者がおり、課金売上が3億円を超えたdAppsも存在しているという。

boarding bridge FounderのOtake氏は、LINEの「Dappポータル」及び「ミニDapp」のUI/UXの優位性をあげた。既存のブロックチェーンゲームでは、ゲームを開始するまでのハードルが高く、ガス代を支払えなかったり、課金が円滑に行えないといった問題があったが、技術基盤にKAIAを活用した仕組み作りを整えたことで、そうした課題が解消されていると語った。

一方で、同氏は懸念点として、従来のゲームビジネスモデルはユーザーの課金によって成立してきたが、「稼げる」という要素によって大量の新規ユーザーを獲得した後、TGE(Token Generation Event)以降も引き続きユーザーにとって魅力的であり続けることが重要であるとの認識を示した。

また、アイドルのNFTに関連するプロジェクトは増加傾向にあるが、体験価値を付加することの重要性にも言及し、インフラとしてのブロックチェーンの必要性を強調した。

CryptoGames株式会社 代表取締役の小澤氏は、NFT関連事業を進めるなかで、サーバ保守やエコシステムの構造上、IP文脈におけるNFT販売には限界を感じたことから、初めから現物として価値のあるものとNFT技術を組み合わせ、トレーディングカードをNFT化するビジネスを開始したと述べた。

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session 4

AIエージェントがもたらす変革と未来

Web3 & AI Super Conference in Mercari

AIエージェントの定義とは?

INTMAXの共同創業者である日置氏は、プライバシーの保護を前提とした環境下におけるAI運用に関して、依然として遅れがあると指摘した。この問題はAIそのものの課題ではなく、周辺のテクノロジーや環境整備の遅れに起因するものであり、早急な対応が求められると述べた。

Japan Blockchain Weekの理事である馬渕氏は、AIエージェントがもたらすあらたなブレイクスルーとして業務の自動化をあげた。大規模言語モデル(LLM)の限界という観点からも、当面はAIの基本性能の向上が続くとの見通しを示しつつ、業務自動化の進展により、チーム5人のうち3人がAIになるといった、人間とAIの競争の時代がまもなく到来すると語った。

AIエージェントの倫理的な活用と社会的責任の重要性について、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社のカスタマーエンジニアであるMomoi氏は、Googleでは「Responsible AI」という厳格な規定を設けており、AIツール「Gemini(ジェミナイ)」のリリースにも一定の時間を要していると説明した。

特にモダリティやコンテクストの理解において、AIは依然として人間の意図を十分に把握できていないと指摘し、今後は「なぜそれを知っているのか」という疑念を招かないよう、自身の情報を自らコントロールできる仕組みの構築が不可欠であると強調した。

これに対し、馬渕氏も自身が日本法人の執行役員を務めていたFacebookにおけるプライバシー問題の際、約4,000人の人員を動員してヒューマンフィードバックを行った経験を踏まえ、AIに対する人的サポートの必要性は依然として高く、特にプライバシー領域においてはその重要性がより顕著であると付け加えた。

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session 5

AI&Web3キャリア論

Web3 & AI Super Conference in Mercari

先端技術領域での、キャリア構築に関する心構えとは?

株式会社メルカリのProduct Managerである安藤氏は、同社がWeb3.0を目的ではなく手段として活用し、体験価値を目的ベースで提供することにより、結果として口座開設数の増加につながったと語った。

また、これからキャリアを構築していくにあたっては、AIやWeb3.0といった技術を「目的」ではなく「目的を達成するための手段」として捉える姿勢が重要であると強調した。

さらに、あくまで個人の体感であると前置きしつつも、メルカリ社内のアプリケーション開発に携わるメンバーのAI活用率は、ほぼ99%に達しているのではないかとの見解を示した。

一方、JPYC株式会社の代表取締役である岡部氏は、先端技術領域におけるキャリア構築について言及し、専門性の優位性は今やほぼゼロに等しくなっており、今後は実行力と先見性を備えた人材がより求められる時代になると述べた。

加えて、同イベントに参加した学生たちに対し、未来に挑む姿勢を持ち続けてほしいとエールを送った。

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session 6

まとめ 学生の熱意で業界のリーダー達が集結

Web3 & AI Super Conference in Mercari Session fin

両学生団体代表者のコメント

Taiga Yano WeCreate3

WeCreate3 代表 矢野大雅氏

ウィクリ主催の過去最大規模のイベントを開催し、当初100〜150名規模の予定が300名超の来場、500名以上の申込と大きな反響を得られました。登壇者・企業・来場者、すべての方々から好評をいただき、手応えを感じました。一方で、大規模化に伴い企業関係や法務面での慎重な対応の重要性も学びました。今後は運営メンバーの関係構築を強化し、短期では新歓、夏はクリプトイベントを通じてパートナー参画を促し、認知度を拡大していきます。

WeCreate3

WeCreate3

日本全国の学生が主体となりWeb3&メタバースの認識を広げ、可能性を作る場を提供することを目標とする学生団体。数多くのメインイベント、多数のプロジェクトとコラボイベントを開催し、日本最大の学生Web3コミュニティとして活動中。

Nakane image Neurabit

Neurabit 代表 中根和俊氏

イベント主催者として、Jupiter創業者の講演からWeb3.0からWeb4.0への移行といった最先端の動向に触れ、あらたな視点と大きな刺激を得ました。技術の進化の速さを実感し、学生が早期にこの領域に触れる重要性を再認識。Neurabitは今後も学生にWeb3.0やブロックチェーン技術の魅力と可能性を伝えていきたいです!

Neurabit

Neurabit logo

慶應義塾大学を中心とした学生団体で、主に生成AIやWeb3.0に関する知識の共有や実務経験の橋渡しを目的とし活動。この団体は、学生がプロジェクトと企業のマッチングを通じて学びを深めることを目指している。

画像:Iolite、WeCreate3、イベントページより引用


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