リップル社の概要とビジョン リップル社は2012年に米カリフォルニア州サンフランシスコにて創業されたブロックチェーン企業である。創業当初から、従来の国際送金システムに代わる革新的な金融インフラを構築することをビジョンとして掲げている。
従来の国際送金では、複数の中継銀行を経由することで手数料が高く、送金に数日を要するケースが一般的であった。これに対し、リップル社は自社開発のRippleNet(リップルネット)を通じて、迅速かつ安価なクロスボーダー決済を実現しようとしている。
RippleNet(リップルネット)とは? RippleNet(リップルネット)とは、リップル社が構築したエンタープライズ向けのグローバル決済ネットワークであり、世界中の銀行や決済プロバイダーをブロックチェーン上で直接接続するものである。これにより、異なる国・通貨間の送金においても、仲介業者を介さずに即時かつ透明性の高い取引が可能となる。
RippleNet(リップルネット)は、従来の個別プロダクト群(xCurrent・xRapid・xVia)を統合し、よりシンプルかつ包括的な決済プラットフォームとして再設計されている。現在では、RippleNet(リップルネット)は主に以下の2つの中核機能により構成されている。
RippleNet Messaging(旧xCurrent相当) ISO 20022規格に対応した決済メッセージング機能。銀行や送金業者同士がリアルタイムで送金情報をやり取りでき、送金状況の追跡や透明性の向上を実現する。
これは従来のSWIFTメッセージングと競合する部分であり、すでに多くの金融機関に採用されている。
XRPをブリッジ通貨として用い、通貨間の即時変換と決済を実現する流動性提供機能。送金元の通貨をXRPに変換し、受取側で別通貨に再変換することで、ノストロ口座を保持する必要がなくなる。
2025年現在、ODLは数十ヵ国以上で稼働しており、東南アジア・中東・ラテンアメリカ地域を中心に実用化が進んでいる。
このなかでも特に注目されているのがODL(オンデマンド流動性)であり、法定通貨を即座にXRPに変換し、受取国で別の法定通貨に変換することで、中継口座(ノストロ口座)を不要にしつつ流動性とスピードを両立している点が画期的である。
こうした構造により、RippleNet(リップルネット)は既存のSWIFTシステムに代わる次世代の国際送金インフラとして、複数の地域・通貨・金融機関をまたぐリアルタイム決済を可能にしている。
銀行とのパートナーシップ リップル社が注目を集めている要因の1つが、世界中の主要銀行や金融機関と強固な提携関係を築いていることである。これは、技術面の信頼性だけでなく、金融業界におけるリップル社の影響力の大きさを示している。
パートナー企業には、三菱UFJ銀行やSBIホールディングスといった日本のメガバンクを始め、欧州のSantander銀行、米国のAmerican Expressなど、グローバルに事業を展開する大手が名を連ねている。
これらの企業はRippleNetを導入することで、送金時間の短縮、運用コストの削減、決済の透明性向上といった恩恵を受けており、今後さらに導入機関が増加すると見込まれている。
採用事例の一部 日本 :SBIグループとの合弁企業「SBI Ripple Asia」
ヨーロッパ :Santander銀行がRippleNet(リップルネット)を用いた送金アプリを導入
中央集権的構造とその評価 ビットコインやイーサリアムといった暗号資産(仮想通貨)は「非中央集権的(分散型)」なネットワーク構造を持つことが特徴であるが、リップル社はあえて中央集権的なアプローチを採用している。この方針は業界内でも賛否がわかれるところである。
中央集権的であるということは、ネットワークの運営や技術開発、XRPの保有・配布などにおいて、リップル社が強い管理権限を持っているということを意味する。この構造は、金融業界や規制当局からの信頼を得やすい一方で、分散性を重視する仮想通貨コミュニティからは「真のブロックチェーンの理念に反する」との批判を受けることもある。
ただし、このアプローチは特に金融用途において迅速な意思決定、規制対応、スケーラビリティの確保といったメリットがあるとされ、実用重視の観点では一定の評価を受けている。