ドナルド・トランプ米大統領は米国時間21日、新設される大規模なデータセンターに、使う電力を自ら発電するよう義務付ける考えをTruth Socialで示した。余剰電力は地域や電力網に供給・売却するよう求め、企業には地域や住民へ「配当」を支払うよう促している。
トランプ氏は投稿で、「新しく大規模な、場合によっては巨大なデータセンターには、自ら発電し、余剰分を地域社会や電力網に提供または売却するよう、私が義務付ける」と述べた。さらに「企業がデータセンターを歓迎されるものにしたいなら、地域社会や住民に『配当』を支払うべきだ」と続けた。
一方、投稿には施行の時期や対象となる施設の規模、所管する官庁は示されていない。日本時間22日時点で、ホワイトハウスやDOE(米エネルギー省)から大統領令などの法的措置や補足の説明は出ていない。配当の金額や財源も明らかにされていない。
政権は2026年3月の大統領布告で「料金負担者保護誓約(Ratepayer Protection Pledge)」を打ち出し、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)やAI企業に、必要な発電設備を自ら建設するか電力を調達し、送電網の増強費用も負担するよう求めていた。ホワイトハウスによると、7月の拡大で電力会社やデータセンター開発企業、州など200超が新たに加わった。しかし、料金体系の交渉は「自主的」とされており、法的な義務ではない。
BlackRock会長兼CEOのラリー・フィンク氏は同日、ブルームバーグTVのインタビューで「データセンターを建設しなければ、かえってインフレ要因になる。今は計算コストが非常に高いからだ」と語った。
米国では電気料金の上昇が続いている。EIA(米エネルギー情報局)の短期見通しによると、家庭向けの電気料金は2024年の1kWhあたり16.5セントから、2026年には18.2セントへと約10%上がる見込みだ。ローレンス・バークレー国立研究所は2024年12月の報告書で、データセンターの電力消費が2023年の176TWh(テラワット時)から、2028年には325〜580TWhに増えると推計している。
Gallup(ギャラップ)が3月に実施し5月に公表した調査では、居住地域でのAIデータセンター建設に71%が反対した。トランプ氏も投稿で、地域で不人気だったデータセンターが、金銭的な合意を結ぶことで「非常に歓迎されるようになった」と説明している。
住民への「配当」を巡っては、ビットコインの政策研究機関BPI(Bitcoin Policy Institute)が9月9日、具体的な試算を公表していた。1GW級のデータセンターがある農村部の郡なら、固定資産税の余剰分で1世帯あたり年4,500〜8,900ドルを配れるという。BPIの提言と今回の投稿との関係は明らかでない。
投稿が求める「自ら発電し、余剰を電力網に売る」形に近い取り組みを、ビットコインの採掘企業も進めている。米採掘大手のMARAはテキサス州に風力発電所を保有し、その電力を系統を介さず自社のデータセンターに直接供給している。2026年4月には、オハイオ州の505MWのガス火力発電所を持つLong Ridge Energy & Powerを約15億ドルで買収する契約を発表した。買収の完了は2026年下半期の予定で、同社は買収後もこの発電所から電力網への供給を減らさない方針を示している。
採掘企業は、電力網に接続済みの電力を生かしてAI向けの事業にも進出している。Supercomputing Newsが各社のSEC(米証券取引委員会)への提出書類をもとに集計したところ、採掘企業8社がAI向けに契約した容量は約5.7GWで、そのうち稼働しているのは約15%の872MWだった。
一方、今回の投稿が暗号資産の採掘施設を対象に含むかどうかは示されていない。EIAの暫定推計では、米国の暗号資産マイニングは国内の電力消費の0.6〜2.3%を占める。トランプ氏の次男エリック・トランプ氏が共同創業者兼最高戦略責任者を務めるAmerican Bitcoinは、2026年4〜6月期時点で約89,242台の採掘機を保有している。
なお、米下院は9月、料金負担者の保護を目的とする法案「Ratepayer Protection Act」を417対3で可決した。上院は9月30日の採決で賛成57票にとどまり、審議を打ち切って採決に進むために必要な60票に届かなかった。
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