
トランプ米大統領は10月21日、自身のSNSであるTruth Socialに1本の投稿をした。あらたに建つ大規模なデータセンターに対し、電力を自前でつくり、余った分は地域や電力網に供給・売却することを義務付けると表明したのである。
同じ投稿で大統領は、データセンターを地域に歓迎させたいなら、地域や住民に「配当(dividend)」を支払えとも求めた。
10月22日(日本時間)時点で、ホワイトハウス、米エネルギー省(DOE)、連邦エネルギー規制委員会(FERC)による法的措置や公式の補足は確認されていないため、これは大統領令でも規則でもない。施行日も「あたらしく大規模なデータセンター」の基準も、所管も罰則も示されておらず、WSJも具体的な運用は語られなかったと報じている。「義務化した」ではなく「義務付ける考えを示した」と読むのが正確だ。
とはいえ伏線はあった。政権は3月、大統領布告で「Ratepayer Protection Pledge(料金負担者保護誓約)」を打ち出し、ハイパースケーラー(巨大クラウド事業者)やAI企業に、必要な電源を自前で確保するよう求めていた。しかし、これは企業が自主的に応じる「誓約」にすぎず、縛りはない。それでも夏までに参加者は電力会社や州にまで広がり、ホワイトハウスによれば米国の電力の8割をカバーするまでになった。一方、同じ趣旨の内容を法律にしようとする試みは、下院をほぼ全会一致で通過したものの、9月末の上院では採決に進むのに必要な60票に3票届かず、足止めされている。
背景には、数字の圧力がありそうだ。LBNL(ローレンス・バークレー国立研究所)の推計では、米データセンターの電力消費は2028年までに、2023年の最大3倍あまりへ膨らみうる。EIA(米エネルギー情報局)は、家庭向け電気料金が今年だけで約5%上がると見通す。そしてGallup(ギャラップ)の調査では、地元にAIデータセンターが建つことに7割が反対している。
一方、シンクタンクのBitcoin Policy Institute(BPI)が9月に公表した報告書「Data Center Dividends」によると、1GW級の巨大施設を抱える農村郡なら、既存の固定資産税収だけで、1世帯あたり年4,500〜8,900ドルを配れるという試算もある。同報告は、地方でデータセンター建設を一時停止する動きが、この2年で50倍近くに膨らんだことも指摘している。