米ドル建てステーブルコインUSDCを発行するCircle(サークル)の株主は米国時間22日、ドナルド・トランプ米大統領やWorld Liberty Financial(以下、WLF)などを相手取り、ワシントンD.C.の連邦地裁に株主代表訴訟を起こした。UAEが関わる暗号資産の取引を通じて、トランプ氏が憲法で禁じられた外国からの報酬を受け取ったと主張している。
原告は、Circleの元ソフトウェアエンジニアで、同社のクラスA株10,000株を保有するJ・ベンジャミン・グリーンバーグ氏だ。被告にはトランプ氏のほか、WLFと関連会社4社、WLFの共同創業者でもあるスティーブ・ウィトコフ中東担当特使が含まれる。Circleは、原告が同社に代わって訴える形をとるため「名目上の被告」となっている。
Circleの広報は「訴訟は個人の株主が起こしたもので、Circleによるものではない。当社は提訴を主導、指示、承認しておらず、参加もしていない」とコメントした。WLF広報のデビッド・ワックスマン氏は「これらの主張には根拠がなく、法廷で解決することを楽しみにしている」と述べた。
ホワイトハウスのアナ・ケリー首席副報道官は「民主党が10年にわたり大統領とその家族、政権に向けてきた使い古された筋書きを繰り返す、またしても取るに足らない訴訟だ」と述べ、利益相反はないと説明している。ローレン・ビス報道官も、トランプ氏の資産は信託で管理されているとした。
原告は、トランプ氏の行為が憲法違反にあたることの確認や違反行為の差し止め、外国から受け取ったほかの支払いの開示、不正に得た利益の返還、損害賠償などを求めている。損害賠償の金額は示されていない。
訴状によると、1件目はUAEの国家安全保障顧問タフヌーン・ビン・ザイド氏が支援するAryam Investment 1による出資だ。同社はトランプ氏の就任4日前の2025年1月16日、WLFの株式49%を5億ドルで取得する契約を結んだという。訴状が引用するトランプ氏の資産公開では、この株式売却でトランプ家の関連会社に2025年に2.625億ドルが入ったとされ、原告はこのうち約7,550万ドルが就任後に流れたと主張している。
2件目は、タフヌーン氏が議長を務めるアブダビの投資会社MGXが、2025年3月に発表したBinance(バイナンス)への20億ドルの出資だ。この出資は、WLFのステーブルコイン「USD1」で決済されることが同年5月に公表された。原告は、これによりUSD1の流通量が一気に増え、トランプ氏が利息収入を得たと主張している。
原告は、こうした取引でUSD1がCircleには太刀打ちできない競争上の優位を得て、Circleの事業が奪われたとしている。また、取締役会に提訴を求める手続きを経ていない理由として、2026年9月にBinanceがCircleへ1億ドルを出資したことなどをあげている。
Circleの収益の大半は、USDCの裏付けとなる準備金の運用益だ。2026年4〜6月期の準備金収入は6.68億ドルで、総収益7.01億ドルの約95%を占めた。仮にMGXの20億ドルがUSDCとして発行されていた場合、同期の準備金利回り3.48%で運用すると、年間の運用益は約6,960万ドルとなる。これは分配コストなどを差し引く前の試算で、原告が主張する損害額ではない。
USD1の時価総額は今月19日時点で約40.2億ドルで、USDCの流通量(今月8日時点で約730億ドル)の約5.5%にあたる。MGXの20億ドルは、現在のUSD1の残高の約半分に相当する。
なお、トランプ氏の第1次政権下でも外国報酬条項を巡る訴訟は複数起こされたが、連邦最高裁が2021年1月に一部の訴訟を訴えの利益が失われたとして却下するよう差し戻すなどし、トランプ氏から金銭を回収するには至らなかった。
また、上院常設調査小委員会の民主党筆頭メンバーであるリチャード・ブルメンソール上院議員は同日、Tetherと、ホワイトハウスで暗号資産政策を担っていたボー・ハインズ氏が共同設立したコンサルティング会社Nxum Groupに書簡を送った。Tetherに対しては、Nxumへの支払いについて2026年11月3日(火)までに回答するよう求めている。ハインズ氏は現在、Tetherの米国事業を率いている。Tetherは、外部の弁護士による調査で不正の証拠は見つからなかったとしている。
Circleの株価は22日、前日比3.44%安の86.62ドルで取引を終えた。同日は暗号資産市場全体も下落しており、提訴との関係は明らかでない。今後、Circleは2026年11月4日(水)に7〜9月期の決算を発表する予定だ。
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