金融・経済

本田圭佑氏の「X&KSK」で活躍する山本航平氏と下川祐佳氏が語る国内スタートアップが抱える課題やビジョン

2024/03/28Iolite 編集部
SHARE
  • sns-x-icon
  • sns-facebook-icon
  • sns-line-icon
本田圭佑氏の「X&KSK」で活躍する山本航平氏と下川祐佳氏が語る国内スタートアップが抱える課題やビジョン

プロサッカー選手兼投資家の本田圭佑氏が立ち上げた「X&KSK」のキーマンたちに迫る

本田圭佑氏が日本のスタートアップへの投資を行うべく立ち上げたX&KSK。今後、世界へと羽ばたくビジョンを持った企業を中心に投資を行っていき、日本における「デカコーン」の創出を目指す。

今回、注目のX&KSKの中心で活動する山本航平氏と下川祐佳氏に、世界をみてきたからこそわかる日本のスタートアップにおける課題や、同ファンドが目指すビジョン、そして今後の展望について語ってもらった。

スタートアップ支援を通じて国内に大きなインパクトを起こす

ナガトモヒロキ(以下、ナガトモ):山本さんの経歴を教えてください。

山本航平(以下、山本):最初はゼネラル・エレクトリックに入社し、3年ほど財務アナリストとしてキャリアをスタートしました。

その後、楽天に入社しまして、楽天の米国本社であるカリフォルニアオフィスの方で働いていました。当時はEコマースが中心で、Amazonに勝つための戦略など、楽天のグローバル展開を見据えたデータ戦略を考えていました。

次にスタートアップ投資を担当して、その後は楽天創業者の三木谷浩史さんの近くで3年間ほど秘書のような役割を担っていました。

本田圭佑が立ち上げたファンドには縁がありジョインした形です。

下川祐佳(以下、下川):日本の大学卒業後、バンク・オブ・アメリカ(当時メリルリンチ)に入り、M&Aや資金調達に携わりました。

その後にサンフランシスコの大学で知的財産に関する勉強をし、ニューヨーク州の弁護士資格を取ってLAに本社を置くシンクタンク・ミルケン研究所に勤めていました。

創立者のマイケル・ミルケンは、ウォール街を目指す人なら誰もが憧れる人物です。彼の周りには金融業界のトッププレイヤーが多く集まってきますし、研究所に所属する人たちも金融業界をバックボーンに持つ人が多かったです。

そこのアジアオフィスがシンガポールにあり4年近く勤めました。

ミルケン研究所では4つの部門を担当していました。なかでも非営利のビジネスデベロップメントといって、『金融のダボス会議』と呼ばれるミルケンの国際会議の運営を担当し、さまざまな企業とやり取りをしていました。

菅義偉元首相や小池百合子東京都知事を始め、企業のトップの方も来られるとのことで、日本に関することを全般的に任されていました。

X&KSK参画のきっかけ

ナガトモ:どのような経緯から本田さんと組むことになったのですか?

下川:本田とは前職のミルケン研究所を通じて2020年の終わりくらいに知り合いました。本田がシンガポールに移ってきた際、彼が今後展開するビジネスを考えていた時期に私に声がかかった形です。

当時は一緒に仕事をすることは考えていなくて、彼のファンドに関心を持つであろう機関投資家を紹介したりしていました。

そうしたなか、私が自立して自分で何かをやろうとしていた際に、「こんなファンドを立ち上げようと思うんだけど」と話をいただいて、タイミングも良く参画することとなりました。

お互いが持つ問題意識も共通していましたし、私が大学時代に学んだ交渉学に関連して、本田もネゴシエーションのスキルに非常に興味があって話が合ったということもあります。

山本:米国に5年くらい住んでいて、次のキャリアをどうしようかと考えていた時に投資関連の仕事をしたいなと思っていました。

ちょうどその時、本田がファンドをやっていたことが報じられて興味を持ちました。当時、中西武士というファンドの共同創業者がLAに住んでいて、共通の知人を介して会う機会があったんです。

彼とディスカッションを重ねているうちに、お互いにジョインしていけたらいいねという話になりました。

そうした背景があり、シンガポールにいる本田に会いに行くことになったというのが始まりです。

本田圭佑氏のコミット

ナガトモ:面白さや大変さについても教えてください。

山本:それぞれで違ってくるかと思いますが、各々専門性があって、たとえば僕は日本の企業をみつけて、下川はアジアや欧米の方を担当しています。

組織をコントロールするというよりも、各自が自由に動いている感じです。面白さでいうと、そういう形で動ける部分は楽しいですし、我々はほかのファンドとは違うことをしなければいけないという使命感のようなものもあります。

とはいえ、やはり大変なことの方が多いです(笑)。大変だけど、充実していますね。

あと、本田圭佑という人間の面白さも魅力ですよね。彼は全然違う考え方を持っているので、そこが面白いんです。

普通の会社だと、月曜日の朝などにミーティングを行ってこの1週間はみんなで何しようかという考えを共有したりするのですが、彼はそんなの必要ないというんですよ。

その時間はむしろ戦略的に投資先のことを考えるべきだ、と。かつて所属していたACミランのロッカールームだと、みんなそういったことを話すんだといっていました。

すべてをサッカーでたとえるので、こちらも納得せざるを得ませんね。引用先がすべてサッカーなので斬新かつ面白くて飽きることがないです。

日本のスタートアップに対する想いと使命感

ナガトモ:本田さんは数々のスタートアップに投資してきた実績がありますが、今回のファンドを立ち上げた背景を教えてください。

下川:このタイミングで日本の会社に投資する機会を逃してはいけないという強い想いが大きいと思います。

個人の想いだけでなく、政府の行動や環境整備があり、今が日本で大きなインパクトを起こせる時期であると判断したのだと思います。

風向きとしても海外の投資家による日本企業への投資熱は高まっています。日本でもエンジェル投資家が増えているなかで、本田には日本のスタートアップに対する強い想いがあり、自分が今やらなければならないという使命感もあります。それがファンドを立ち上げた背景です。

日本におけるデカコーン創出を目指す

ナガトモ:X&KSKが注力する投資先やスタートアップの選定基準について教えてください。

山本:ファンドの目的は日本においてデカコーンを1社でも多く生み出すことです。複数のユニコーンよりも1社のデカコーンが誕生した方が業界に与えるインパクトが強いと思います。

それが誕生するには、その会社がグローバル展開する必要があります。そのような会社をどのように選定するかと考えた場合、業界を絞ってしまうと難しいです。

また、国内の資本だけでそれを達成することも難しい。どうやったら海外の投資家が日本の会社に投資をするのかを考えた場合、我々が投資している会社なら投資を実施しやすくなると考えています。

たとえば日本特有のIPだったりは強いですよね。どうやったら海外の資本を巻き込めるのかを考えて日本のベスト30社を4年間かけて探していきます。

我々が投資した後、海外の資本を呼び込んでいって、場合によっては米国等での上場も考えています。

ナガトモ:Web3.0領域についてどのようにみていますか?

山本:Web3.0領域には我々も過去に投資経験があります。Alchemyなどは大きな成果をあげました。我々はゼネラルファンドとはいえWeb3.0領域には関心がありますし今後もみていきたいですね。

今の時代だからこそきちんとしたプロットを持ってプロダクトを作る起業家は重要だと思っています。ベアマーケットでもしっかりとプロダクトを作る起業家に注目しています。

ブロックチェーンでも日本ローカルに適したものであるとか複数のチェーンにまたがるものであるとか、DeFiなどの金融もあるでしょうし、いろいろな領域で投資のチャンスはあると思います。

日本の強み活かしたグローバルで戦う企業を支援

ナガトモ:日本のスタートアップにおける課題と障壁について教えてください。またそれらを克服するため御社ファンドではどのような取り組みを考えていますか?

下川:1番如実に出ていることは本田もよくいっていますが、ファウンダーのマインドセットがきちんとできているのかという点です。

私は次世代リーダーのコミュニティをみてきましたが、みなさん東南アジアのマーケットを抑えて海外に出ていこうという人が多いです。

その国の経済を抑えることを強みにして、海外に出てどれだけ大きく成長できるのかと考えているファウンダーが多かったですね。

日本はGDPが4位に転落したとはいえ、マーケット自体はまだ大きいと思います。日本のマーケットを抑えていればスケールできるということが逆に悪い方向に働くことがあります。

それは海外戦略を考えることができないということです。本田はよく「サッカーで全国大会を目指せばワールドカップには行けない」とたとえることがあります。

「ワールドカップを目指すからそこに近付くことができる」。そういう目線についてルールがあるわけではないのですが、グローバル展開を目指す上で彼らの人材育成をしていきたいと考えています。

ナガトモ:今後のX&KSKのビジョンと目標について展望をお聞かせください。

山本:これまで日本になかった我々のファンドを通じて、業界に一石を投じたいと思います。

すばらしい人がいて、そのような人が海外に進出するにはどうしたら良いのかわからないという現状がありますから、我々が手助けをしていきたいと考えています。

このチームで4年間かけてさまざまなことをやり切りたいと思います。


Profile

◉ 山本航平(Kohei Yamamoto)
X&KSK Managing Partner
投資デューデリジェンス、投資先支援における事業開発、ファンドレイズ、Investor Relationsなどをリードする。X& Group参画以前は、楽天の社長室に所属し、Rakuten Capitalのグローバル投資、100社以上の大企業が所属するオープンイノベーションコミュニティであるRakuNestの立ち上げ、AI/ビッグデータ活用のためのグローバルデータプラットフォーム構築などの全社戦略、同社の東京・シリコンバレーオフィスで従事。楽天以前は、米GE(ゼネラル・エレクトリック)において、ファイナンス分野のリーダーシッププログラムに参画し、エネルギー・金融・ヘルスケア事業における経営管理・会計業務に従事。一橋大学経済学部卒。

◉ 下川祐佳(Yuka Shimokawa)
X&KSK Head of Business Development
Investor Relationsや資金調達、イベントのプログラム開発を専門とする。X&KSKに参画する以前は、Milken Instituteで初の日本人として同機関の日本におけるネットワーク拡大に尽力し、主にアジア地域の機関投資家、慈善家、ファミリーオフィスや若手起業家との関係を強化し、同機関の目標を進展させる戦略的パートナーシップの構築に従事。Milken Institute以前は、Bank of America証券の機関投資家部門でテクノロジーセクターに従事。ニューヨーク州弁護士。カリフォルニア大学バークレー校ロースクール卒。

◉ナガトモヒロキ(Hiroki Nagatomo)
コラムニスト
1988年生まれ。横浜市立大学在学中に起業。大手通信キャリアを主なクライアントとして人材派遣会社を展開する。30ヵ国以上の海外渡航で出会った海外富裕層との交流がクリプトに触れるきっかけとなる。2022年、Web3.0時代の資産形成プラットフォーム「BitLending」の立ち上げに参画。独自のネットワークを活かしてクリプトの今を追う。趣味は写真。トライアスリートとしても世界各国のIRONMAN RACEにチャレンジしている。


関連記事

本田圭佑氏の「X&KSK」主催 グローバルカンファレンス『CREATE』イベントレポート

SHARE
  • sns-x-icon
  • sns-facebook-icon
  • sns-line-icon
Side Banner
MAGAZINE
Iolite(アイオライト)Vol.10

Iolite(アイオライト)Vol.10

2024年11月号2024年09月29日発売

Interview Iolite FACE vol.10 デービッド・シュワルツ、平田路依 PHOTO & INTERVIEW「ゆうこす」 特集「日本国内の暗号資産業界動向」「トランプvsハリス 暗号資産業界はどうなる? 」「評価経済社会は予言書だったのか」 Interview :株式会社メタプラネット サイモン・ゲロヴィッチ、CALIVERSE キム・ドンギュ 連載 Tech and Future 佐々木俊尚…等

MAGAZINE

Iolite(アイオライト)Vol.10

2024年11月号2024年09月29日発売
Interview Iolite FACE vol.10 デービッド・シュワルツ、平田路依 PHOTO & INTERVIEW「ゆうこす」 特集「日本国内の暗号資産業界動向」「トランプvsハリス 暗号資産業界はどうなる? 」「評価経済社会は予言書だったのか」 Interview :株式会社メタプラネット サイモン・ゲロヴィッチ、CALIVERSE キム・ドンギュ 連載 Tech and Future 佐々木俊尚…等